昨年の今頃,【愚智提衡而立治之至也: 「法の下の平等」とレコメンドサービス】で俎上に載せた
田中,敦司
図書館は利用者の秘密を守る--カウンターで感じた素朴な疑問から (特集:図書館の自由、いまとこれから--新たな図問研自由委員会のスタートにあたって)
みんなの図書館 (通号 370),21~26,2008/2
が,最近そこここで取り上げられ,我が意を得たりと思ったことである.
図書館は利用者の秘密を守る-カウンターで感じた素朴な疑問から- - 読書ノートのつもり?なつれづれ日記
http://d.hatena.ne.jp/yoshim32/20090209/1234159904
それであなたはなにがしたいのか-田中敦司「図書館は利用者の秘密を守る-カウンターで感じた素朴な疑問から-」に感じた根本的な疑問 - ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090211/1234346362
その文章が掲載された「
みんなの図書館」は言うまでもなく
図書館問題研究会の機関誌である.それほど「図書館の自由」を金科玉条にしているはずの
図問研が,最近明らかになった
容疑者と被害者情報漏らす 報道機関に東金市立図書館 - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/200901/CN2009012401000452.html
この件に関して,報道から3週間を経過した現在もなお,沈黙を守っているのは如何なる理由があってのことか.質問状に対する返答がない,というのは理由にならないだろう.記事に拠れば,この件を調査したのは
日本図書館協会であり,図問研のメンバーにはこと「図書館の自由」について,日図協のイデオロギーを担っている人間も少なくないわけだから.
また,2002年に発覚した,東京都の区立図書館において委託業者から派遣されていたカウンター要員が来館者の個人情報を悪用した件について,督促を怠業した公務員を弁護し委託会社とその派遣社員にすべての非を押し付け,そのことを指摘した意見に対し犯罪を使嗾してまで公務員の責任を回避しようとした
東京の図書館をもっとよくする会の関係者もまた,この件については沈黙しているのである(なお,当時のコメントは注記も無く書き換えられ,犯罪を使嗾した箇所は改竄されているので現在では参考にならないことをお断りしておく).2002年の事件が「図書館の自由」に対する重大な挑戦(公務員による督促の怠業よりも罪が重い)というのであれば,東金市役所と東金市立図書館における,公務員による来館者の個人情報漏洩は,委託業者によるそれよりも責任が重いのではないかと思うのだが.
共同通信の記事で気になるのは「調査に対し東金図書館は、一部の取材者が執拗に情報開示を要求したとしており、図書館関係者は、報道側にも利用情報の扱いに対する理解が必要だとしている。」というくだり.この,如何にも公共図書館に対して理解のありそうな文章だが,2002年の記事と比較してみると,論調の差異がわかると思う(エントリーの最後に全文を引いておく).日図協や図問研の指定管理者や委託に対する考え方,共同通信の関係者が「みんなの図書館」に連載を持っている事実などを考え合わせると,これは恐らく情報漏洩に対する報道機関への責任転嫁と公務員擁護のために(意図的にかどうかは別にして)執筆された文章ではないかと思われるが,どうだろうか?
いずれにせよ,「公共図書館の民営化」などというデマゴギーを放送している団体に,公務員の罪を問わせることが,荷が重いのは重々承知の上で,それでもこの「図書館の自由」をめぐる公務員と民間への適用におけるダブルスタンダードについては,指摘しておかなければならないだろう.「図書館の自由」はあなたがたが「官尊民卑」という基準で恣意的に運用してもいいものだったのですか?
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