謎のマンガ家・酒井七馬伝
こちらも手塚治虫に深く関わった漫画家であった酒井七馬(1905-1969)の評伝である.
手塚が世に知られるきっかけとなった『新寶島』の共同制作者であるだけではなく,自らも第二次大戦前からアニメーター,漫画家,紙芝居作家と多彩な活動を展開しながら,今や忘れられたどころかその死にまつわる奇怪な「伝説」にまとわりつかれてきた不幸なクリエーターの一生を丹念に掘り起こした労作.この本にも教えられるところが非常に多かった.北関東で育った僕のような人間には,関西圏,それも大阪というところはなかなかわかりにくい街であり,雰囲気を湛えた場所であり,この本のように丹念に事物を拾ってもらわないと,そこで起きていた事実さえもわからないものになってしまうのですよ.関東圏・東京圏での出来事は,過去のことでも字面を追いかければ,ある程度までは理解できるのだが.
それにしても,手塚周辺の人物に多かれ少なかれ,アニメーションに関わりのあるひとが多いのは偶然ではないのだろうな.
最近のコメント