ベートーベンのソナチネ WoO.50の楽譜が見たい。
たまたまレファレンス協同データベースで見かけた質問と回答。
ベートーベンのソナチネ WoO.50の楽譜が見たい。
「WoO.50」では、ベートーベンの作品として登録されているものは無く、また「ベートーベン」と「ソナチネ(sonatine)」での検索の結果、「WoO.」付の作品は、見つかりませんでした。
さらに、『クラシック曲名事典』にも記述が見つかりませんので、ベートーベンのピアノ曲集とソナチネの紹介で、回答とさせて頂きます。
http://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000081521
何だか頭の中が沸いてしまうようなヒドイ回答なので,不肖この私が改めて回答を授ける。当該担当者は心して読むように。
まず上記回答に
“「WoO.50」では、ベートーベンの作品として登録されているものは無く、また「ベートーベン」と「ソナチネ(sonatine)」での検索の結果、「WoO.」付の作品は、見つかりませんでした。 ”
とある。回答者が何を検索し確認したのかわからないが,取り敢えず『ベートーヴェン事典』(東京書籍)程度は確認すべきであろう。
詳しくは『ベートーヴェン事典』に「Hess番号,WoO番号とは」(p606-608)という項目があるので参照してもらいたいのだが,「WoO」番号とはドイツ語の「作品番号のない作品(Werke ohne Opuszahl)」の意味で,キンスキー=ハルムの作品目録(1955年出版)でOp番号の付いている作品の後に並べられた205曲の作品に対して付されたものである。例えば「エリーゼのために」という愛称で知られるイ短調のバガテルはWoO.59である。
『ベートーヴェン事典』の巻末に「ベートーヴェン作品番号対照索引」というありがたい資料があり,これによって問題の「WoO.50」を探すと,「《ソナチネの2楽章》ヘ長調[Hess63]」という作品であることがわかる。この『ベートーヴェン事典』は全曲の解説が掲載されており,WoO.50もp384-385に解説が載っている。ボン時代の友人の子孫宅に遺されていた未完成(?)の小品で,その友人の書き込み等から,友人のために作曲され友人に渡された作品である由。
楽譜はNACSIS-Webcatを「WoO.50」で検索してみたところ,ミュンヘンのヘンレ社から出版されている校訂版があるが(例えば“Klavierstücke / Beethoven ; nach Eigenschriften und Originalausgaben herausgegeben von Otto von Irmer ; Fingersatz von Walther Lampe”),国内で入手しやすいのは全音楽譜出版社から出ている『ベートーヴェン:ソナチネ集と初期の作品(全音ピアノライブラリー)』ということになるだろうか。
以上,あまりに質問を寄せた来館者に申し訳が立たなかったので,担当者に代わって不肖私が回答したものである。・・・・・・まったく,せめてこの程度の回答が導き出せないようでは,図書館が役立たずと思われるのも,担当者がレファレンサー失格と言われても仕方がない。質問に対する適切な参考図書の選定もできていないし,そもそも「ベートーベン」で探して事足れりとしているところからも,音楽に対する知識が欠けているのは明白である。このようなレファレンスの回答事例を載せる前に,館内の誰かがチェックしなかったのだろうか。不肖私でさえ,一目見て「これはおかしい」と気がついたほどのものなのに。
来館者をガッカリさせてしまったのが,とにもかくにも残念である(嘆息)。
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