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2010年5月23日 - 2010年5月29日の記事

2010/05/29

終りではなく,本当は始まりだったのだ

シューベルト/交響曲ハ長調D944@オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(EMI:7 63854 2)

 1960年11月の録音。
 実に厳しい,スケールの大きな演奏が繰り広げられているのだが,聴き終わって残るのが「満足感」とはちょっと違う。いい演奏を聴いたなあ,ではなく,どこか消化不良な,もしくは何やら謎を残されてしまった,そんな感じ。あるひとが「居心地が悪い」と評していたが,たしかにその通りである。未完成な作品でもなく,カットがされているわけでもないのに,「言いたいことはまだ沢山あるんですよー」と言いながら,フッと終わってしまう。

 と,ここまで書いてきて,別の誰かが「シューベルト自身は,この作品を集大成とするつもりはまったくなく,むしろ〈交響曲第1番〉とするべく書き起こした交響曲だったのでは?」と述べていたことに思い当たる。終りではなく,始まりとしてのD944。・・・・・・本当に惜しいことである。

2010/05/28

開いてしまったパンドラの箱に「希望」はいたのか

ショスタコーヴィチ/絃楽四重奏曲第15番変ホ短調作品144@エマーソン四重奏団(DG:POCG-10280/10284)

 1994年7月・8月の録音。
 ロシアの四重奏団の演奏に比べて,いわゆる「西側」の四重奏団による演奏は線が細いように感じられることが多い。エマーソン四重奏団の録音もセンシティヴなところはよく表現されているが,表現の振幅が若干狭いように聴こえる。曲によってはもう少し掘り下げられる余地があるよな,と思うが,その中でこの15番は,さすがに最後の絃楽四重奏ということで,全6楽章すべてが悲痛な叫びを上げているようなアダージョと言う異形の音楽を,時には弓が絃を噛むほどの力演で表現している。

2010/05/27

ハイフェッツはいつもハイフェッツ

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61@ヤッシャ・ハイフェッツ&アルトゥール・ロジンスキ/フィルハーモニック・シンフォニー・オーケストラ(ミュージック&アーツ:CD1102)

 1945年1月14日の録音。音は良好。
 指揮者がロジンスキだから,オケはニューヨーク・フィルだろうが(^^;),ハイフェッツのヴァイオリンは常にハイフェッツのヴァイオリンだなあ,と。高校時代の知人にハイフェッツの大ファンがいて,如何にハイフェッツが素晴らしいヴァイオリニストであるかを多少なりとも叩き込まれた(^^;)身であるが,それにしても「鋼鉄のヴァイオリン」だと思う。速いテンポで颯爽と進むベートヴェンである。
 昔の慣習で第1楽章が終わると拍手が入るが,第1楽章コーダの追い込みはなかなかに凄まじい。

2010/05/25

古き良き時代

チャイコフスキー/交響曲第4番ヘ短調作品36@アナトール・フィストラーリ/ロイヤル・フィル(ロンドン:POCL-90018)

 1971年の録音。
 デッカが一時期売り出していた「フェイス4」録音で録音されたもののひとつ。だが,このCDどうにも雰囲気に乏しいのは,復刻の失敗というわけではなさそうで,このような残響なしの割とナマっぽい音が歓迎された時代もあるということだろう。
 演奏は,フィストラーリが楽譜に指定されていないようなところまで細かく表情をつけながら自在にオケをドライブして,かなり個性的なチャイコフスキーを聴かせる。手綱の緩め方が独特。

2010/05/24

戦いは続く・・・・・・

ショスタコーヴィチ/交響曲第8番ハ短調作品65@ルドルフ・バルシャイ/ケルン放送交響楽団(ブリリアント:6324/5)

 1994年3月14日と1995年10月16日の録音。
 バルシャイの全集は続けて聴くと,みんな同じ色なのであまり面白くないが(^^;),単独で取り出せばいい演奏が多い。この8番は中でも名演で,あまり厚くない絃を上手に活かして,玲瓏で冷やかな雰囲気を醸し出している(とはいえオケはいささか非力)。バルシャイの創る音楽も,ブリリアントの録音も現実主義でおおよそロマンティックとは無縁だが,曲が8番だからこのくらい非情でいいのである。

2010/05/23

焦燥感

ショパン/ポロネーズ嬰ヘ短調作品44(第5番)@アルトゥール・ルービンシュタイン(BMG:BVCC-37234)

 1964年3月の録音。
 ショパンのポロネーズなら「軍隊」「英雄」「幻想」と通り名のある作品があるのは承知の上で,やり場の無いほの暗い情熱を手当たりしだいにぶつけるような,この作品を第一に推す。そして,その演奏にルービンシュタインのこの録音を推すのは,恐らく30年ほど前からずっとこの録音に親しんできたからだろう。あるとき,NHK-FMで放送されたショパンの特集で,パデレフスキの壮大な「軍隊」ポロネーズ,コルトーの「バラード」4番,ブライロフスキーのワルツ作品9の1(9の2ではなく)などとともに,ルービンシュタインのこの録音が取り上げられていたのだが,福徳円満な芸風で鳴らしたと聞く晩年のルービンシュタインのはずが,ここでは何とも形容し難い焦燥感と暗い情熱を見事に表現していて余す所がない。

 ・・・・・・そう言えば,このCDにはもちろん「英雄」ポロネーズ変イ長調作品53も収録されている。この「英雄」についてウチのカミさんが以前「これはね,ルービンシュタインの焦りと言うか,どうにもならない焦燥感のようなものが出ている演奏だよ」と力説していたのだった・・・・・・。

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