終りではなく,本当は始まりだったのだ
シューベルト/交響曲ハ長調D944@オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(EMI:7 63854 2)
1960年11月の録音。
実に厳しい,スケールの大きな演奏が繰り広げられているのだが,聴き終わって残るのが「満足感」とはちょっと違う。いい演奏を聴いたなあ,ではなく,どこか消化不良な,もしくは何やら謎を残されてしまった,そんな感じ。あるひとが「居心地が悪い」と評していたが,たしかにその通りである。未完成な作品でもなく,カットがされているわけでもないのに,「言いたいことはまだ沢山あるんですよー」と言いながら,フッと終わってしまう。
と,ここまで書いてきて,別の誰かが「シューベルト自身は,この作品を集大成とするつもりはまったくなく,むしろ〈交響曲第1番〉とするべく書き起こした交響曲だったのでは?」と述べていたことに思い当たる。終りではなく,始まりとしてのD944。・・・・・・本当に惜しいことである。
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