「図書館を利用するということ」について
こんにちは.
これから,「図書館を利用するということ」について,簡単にお話します.入退館の際の諸手続きや,どんな本がどこにあるか,を説明する前に,まずは「図書館を利用するって何をすることなのかな?」ということについて話をします.
みなさんにとって「図書館」って,どんなところですか? ・・・・・・と訊ねられて,イメージの湧くひと,何のイメージも湧かないひと,それぞれでしょう.ひょっとすると,これまで人生の中で使ったことが無いひとがいるかもしれません.今日は(日本相撲協会の一門でもあるまいし)「犯人探し」(^^;)をするのが目的ではありませんので,使ったことが無いひとを特定するようなことはしませんが(^^;).これから,どんどん使ってもらえれば,それでいいんです.
図書館というところは,カオスの中にふわふわと浮かんでいる知識を,ある一定の順番(専門用語で「分類」と呼びます)に基づいて並べ直して,知識が必要なひとに,時間をかけずにお届けすることができるようにすることを目的とする施設です.それが常にうまくいっているかどうかについては,中のひととしては判断しかねるところがありますが(^^;).
しかし,闇雲に「使え」「利用しろ」と頭ごなしに言ったところで,いきなり目的も無く図書館まで来るのは敷居が高い-みなさんには,この「敷居が高い」という言葉が通じないかもしれませんね.「敷居が高い」という言葉の意味がわかるひとは手を挙げてみてください.・・・・・・はい,ありがとう.さて,「敷居が高い」という言葉の意味がわからないときはどうするか? 今ではweb(インターネット)に種々の辞典・事典が無料で公開されていて(例えばコトバンクであるとか,Weblioであるとか),そのようなサービスにアクセスして検索窓に「敷居が高い」と打ち込んでEnterキー叩くなり「項目を検索」をクリックするなりすれば,恐らく言葉の意味がたちどころに表示されるでしょう.昔は,そうではありませんでした.
この棚に並んでいるのが,図書館のひとが「参考図書」と呼ぶ,一群の書籍です.辞典,事典,便覧,白書,ハンドブックなどなど,呼び名は異なりますが,要するに「ある特定の内容に関する調べ物をするときに,最初の手がかりを求めて利用する書籍」のことです.ですから,漠然とした内容の調べ物や,学問と直接関係のない内容の調べ物には向いていません(^^;).後者の調べ物には,別の本が準備されています.この図書館にも,例えば市内のレストランや,国内の観光地について調べるための本はあるので,あとで確認してみてくださいねー.
それはさておき,「敷居が高い」でしたね.この棚に並んでいる本の中から,「国語辞典」と呼ばれるものを1冊,取り出してみましょう.この青く分厚い本が,岩波書店という出版者から出ている『広辞苑』という,中型の国語辞典です.時々「国語辞典はどこですか?」と訊ねられて取り敢えず『広辞苑』を紹介すると怪訝な顔をするひとがいますが,本のタイトルに『広辞苑』と名づけられているのですね.この本では,言葉が五十音順に並べられていて,それぞれの言葉の意味が簡単にかつわかりやすく説明されています.ここには初版,第二版,第二版補訂版,第三版,第四版,第五版,そして最新の第六版と並んでいますが,最新の第六版を取り出してみましょう.
(中略)
今は「敷居が高い」という言葉についての調べ物なので,ここで終わりますが,実際の調べ物,特に調査・研究と呼ばれる,専門的な知識を見つけ考えるための調べ物では,この参考図書を調べるのは,あくまでも調査・研究のスタートです.ここからスタートして,膨大な資料の山に分け入っていくことになるのですが,そのことについては,後日何かの機会に教わることがあるでしょう.
・・・・・・というわけで,『広辞苑』を使ったら元の棚に戻します.このとき,くれぐれも空いているからと別の棚に並べないこと! 図書館は誰もが利用できるところに特色の一つがあるので,次に『広辞苑』を使うひとがいるのです.一定の順番で並んでいるはずの本が並んでおらず,あるはずのところに『広辞苑』が見当たらなかったら,次に使うひとの「図書館を利用する機会」を奪うことになります.何も図書館の中のひとが順番に並んでいる本を見て「秩序だっているなあ」と喜ぶために,分類というものがあるわけではありません(^^;).図書館が開館している時ならば,誰がいつ来館しても図書館を使いこなせるように,分類というものが定められ,一定の順番で本が並べられることにより,その本を使いたいひとが簡単にその本まで辿りつけるようにしておく,それが図書館における「分類」の意味になります.そのことは,くれぐれも忘れないでください.
以上,目的を持った図書館の利用について,簡単に説明してきました.もちろん,図書館は知識を司る空間ではありますが,その空間を目的も無く理由も無く散策することは大いに結構です.時間のあるとき,また,頭や心が疲れたときに図書館がやすらぎの空間として,みなさんに利用してもらえれば,実はそちらの方が密かにうれしかったりするのです.個人的には(^^;).これからの生活の中で,図書館がいろいろな意味で利用してもらえることを,そして図書館をみなさんが支えてくれることを願っています.
« 個人サイト改装工事のお知らせ | トップページ | ヴォーン・ウィリアムズ/南極交響曲 »
「図書館の風景」カテゴリの記事
- 27年目のシーズン(2014.04.01)
- どこから折っても金太郎?(2013.07.31)
- 「キッチュ論」ノート(その2)(2013.07.08)
- 「キッチュ論」ノート(その1)(2013.07.07)
- それは「温故知新」ではない(2012.11.04)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
例の如く,これはオリエンテーション/ガイダンス用のプレゼン原稿です.普段は新入生オリエンテーション以外で説明をやる機会は乏しいのですが,たまたま今日,とある講義で図書館について話してくれ,という依頼があったので,一気呵成に書き上げて,4月の新入生オリでも使いまわそう,という魂胆です(^^;).新入生オリでは,若干手直しをする必要があるのですが(大講堂でパワーポイントを使用する形式のため),内容はこれとそれほど隔たりのあるものにはならない予定.文章としては,さほど問題はないかと.
あとは,僕のプレゼン能力を上げることだなあ(sigh).これが難題.
投稿: G.C.W. | 2010/02/05 22:09