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2009年3月1日 - 2009年3月7日の記事

2009/03/07

「土佐派」の裏切り(^^;)

旬刊 出版ニュース2009年3月上旬号の目次一覧
↑こちらに掲載の,↓この文章.


若い図書館職員に、あえて確認しておきたい図書館の役割: 館界に蔓延するおかしな論旨--伊藤昭治@元茨木市立中央図書館長
 無内容な代物であり,批判に多言を弄するのは時間の無駄なので1箇所だけ.

「歴史を学ぶことが大切だと言っているのは(以下略)(p.6)
では,こちらは如何ですか?

「このほか,立憲改進党の中心人物であった小野梓や馬場辰猪なども(以下略)
『新版図書館の発見』前川恒雄,石井敦著,日本放送出版協会,2006年1月,p.123
この程度の初歩的な間違いを30年以上指摘できない(初版でも間違っていた)方が「歴史を学ぶことが大切」とおっしゃる,その「歴史」って何ですか?
 ときに高知県(小野や馬場の出身地,立志社も高知人脈)には,図問研の有力な会員もいるかと聞いていますが,「土佐派」はこの箇所について指摘しないのでしょうか? 『市民の図書館』というイデオロギーの前には,「神」を守るために白も黒といわなければならないんでしょうか(sigh).

 ちなみにこの箇所,日本の近代政治思想史を多少なりとも齧った人間には,まったく些細な間違いではないですよ.小野梓(1852-1886)と懇意だった馬場辰猪(1850-1888)が,立志社との関わりがあったとはいえ,小野が設立に深く関与した改進党ではなく,板垣退助の自由党に参画し,「結党時の自由党で主導的な役割を果たしたのが馬場と枝盛だった」(『植木枝盛』米原謙著,中央公論社〈中公新書1086,p.5〉,1992年8月)ことはつとに常識であり,例えば馬場が「なぜ改進党をえらばなかったのであろうか」と,その評伝『馬場辰猪』(中公文庫,1995年6月)の著者である萩原延壽も問いを立て,わざわざその理由を考えているのですから(p. 206-222).


 というわけで,伊藤の文章はそもそものキモがダメです.そして,あとに延々と続く文章が信用にも信頼にも足らない,Gleichshaltungを意図したプロパガンダであることは,多言を要しますまい.この程度のものを載せる「出版ニュース」の見識を疑います.

(3月8日改稿)

2009/03/02

同床異夢

 去る2月15日に開催された「大阪国際児童文学館と府立図書館を考える集い」の資料群を,id:hana53さんのご好意で入手しました(hana53さんありがとうございました).先日で肉体労働もひと段落したところで,いただいた資料をためつすがめつしていましたが.

 結論から言ってしまえば,児童文学館の存続運動は府立図書館の市場化テスト(指定管理者委託の導入)問題とは別個の問題であり,これらは切り離して論じた方が,お互いの問題解決のためでもあると思わざるをえません.児童文学館の価値は府立図書館とは関係なく成立しているものですし,府立図書館の問題に触れずとも児童文学館の存続運動は可能です.ましてや配布された資料群のような形で府立図書館の問題を絡めたのでは,却って児童文学館存続への支持が減りはしないかと心配になってしまいます.

 というのも,資料群の中にある図書館問題研究会大阪支部の作成した資料が,教育行政からも文化財行政からも図書館行政からもおおよそかけはなれた,ヴィジョンもミッションも明確ではない既得権益護持を目的とした労働運動の産物であり,内容が「指定管理者」(=民業)を貶めるだけの拙劣なプロパガンダ(デマゴギーと言ってもいい)に堕しているからです.そもそも指定管理者の導入は「民営化」ではありません(国際児童文学館 寄贈者・関係者等と知事との意見交換会 発言要約によれば,橋下も「民営化」と言っているようですが).他の点についても,既に愚智提衡而立治之至也: 官尊民卑に弄ばれる「図書館の自由」で「官尊民卑」について述べているところなので,細々したところは一々繰り返しません.今回の件で言えば,例えば「大阪国際児童文学館と大阪府立図書館を考える集い」(2009.2.15)報告(1) - 帰ってきたハナログでhana53さんが紹介している,児童文学館へ鳥越氏の資料が引き取られるきっかけとなったらしい大阪府教育長の巧言令色ひとつとっても,公務員が公務員であるだけで無謬であるとは考えにくいところへ,指定管理者(=民業)を貶めるだけ(しかもどれひとつ取っても具体性に全く欠ける指摘ばかり)の資料を持ち出しても,彼らが期待するような効果があるとは思えないのですが.

 あるいは,やはりhana53さんにご紹介いただいた「トヨタ営業所で『お奨めの車ありまっか』と聞いて『日産エエですよ』とは言わないでしょう」という発言.そもそも公共図書館の指定管理者を引き受けるような企業・団体がそんなことを公共図書館という場所で公然とやれば,恐らくその企業・団体は来館者からも自治体の担当者からも信用を失うでしょうし,そのような企業・団体は淘汰されてしかるべきです.もしそのような行為を繰り返す企業・団体が何らかの力により淘汰されないのであれば,それはルールを定めている行政の失態であり,その場合企業・団体ともども信用を失うのは,ルールを運用している公務員だろうと思うのですが.そして,公共図書館においてトヨタと日産の比喩で想定される企業は出版流通関係の企業ではないかと考えられるのですが,出版流通業界は以前から児童文学館の維持に,公共図書館業界よりも遙かに貢献してきた業界であり,児童文学館の存続を考える場において,その業界を平然と揶揄できる政治的センス(リテラシーと言ってあげましょうか?)の欠如には恐れ入るばかりです.

 そもそも公共図書館における「資料」が書籍という形で成立するは,出版流通業界という「民業」によるところが大きいはずですし,公共図書館の来館者の過半は「民業」を生業とする人間とその家族じゃないかと思うのですが,資料群を作成した図問研大阪支部にはその程度の想像力を働かせるだけの能力も欠如しているんでしょうか? ついでにいえば,児童文学館の新規増加資料の多数は出版者の寄贈によるものであり,その出版者はほとんどが民業でしょう.そのような背景に想像力が働かないのであるならば,彼らには公共図書館に勤務するだけの経綸が不足しているのではないでしょうか.民業を謗ることで保身することのみを目的としている連中には,市場化テストにより公共図書館から退場してもらったほうがマシです.

 僕個人としては,大阪府立国際児童文学館を維持する運動の目的が,必ずしも大阪府立図書館の市場化テスト導入反対と目的を一にする必要がないと思われる現状では,両者を切り離して考えた方がいいと思います.ましてや府立図書館の市場化テスト反対に便乗して公務員の既得権益護持をはかり,民業への誹謗を繰り替えし,ひいては児童文学館の運営に多大の寄与をもたらしてきた出版者(=民業)を貶める行為をやめない連中とは,児童文学館の維持に知力体力を集中させるためにも手を切るべきです.


 手厳しい? まさか(^^;).

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