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2009/06/09

図書館経営論の教材として使うによく

 朝日新聞の記事が【光る本棚・コンシェルジュ…図書館を変える民間委託】【万引き対策に電子タグ構想】と連投された(^^;)おかげで影が薄くなってしまいましたが,数日前にほんの少し,図書館業界で話題になったこちらの包括外部監査報告書.

岡山市:外部監査
http://www.city.okayama.okayama.jp/soumu/gyoukaku/gaibukansa/index.html

平成20年度報告書 第8章(図書館について)
http://www.city.okayama.okayama.jp/soumu/gyoukaku/gaibukansa/pdf/H20%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8%E7%94%A8%E5%88%86%E5%89%B2%E3%80%81%E5%9C%A7%E7%B8%AE%E7%89%88/kansa20_06.pdf

ひと通り読んでみましたが,僕にはすこぶる面白い内容の報告書でしたね(^^;).一言で感想を述べればエントリーのタイトルの通り「図書館経営論の教材として使うによく」というところです.皮肉ではなく,頭のいい人がそれなりに公共図書館について参考文献を繙いた上で,図書館から提出された資料を読み解いてみたら「これがここも当てはまるじゃん」「こちらもこの文献の分析がっ!」と,自分の勉強の成果に驚いて突っ走った結果がこれ,という印象を受けます.
 こーゆう経験,ありませんか? 未知の分野について勉強したあとで,その分野を改めて見聞したとき「これはこんなことだったのか!」「これはこーゆう意味だったのか!?」と,それこそ「目からウロコ」状態になったのがウレシクて(^^;),という.で,ついつい無意識のうちに,そこかしこにトラップを仕掛けまくって楽しんじゃう,という知識を得ることが楽しくなりだした頃合にありがちな経験.この監査を担当した方が,それと似たような感覚だったんじゃないかなあ,とこの報告書を読みましたことですよ.

 細かくツッコミ入れると時間がいくらあっても足りないので,なるほどなあ,と思ったところをひとつふたつ.

 「第7 岡山市立図書館の事務事業の分析」(p220-)の「2.図書館資料の選書、収集業務について」で,2ページ半にわたって延々と図書館の説明が論難されているが,ここの部分は図書館の説明に難があると言わざるを得ない.最初に出した数字に対する監査人の質問に,再回答で出した数字との整合性が問われるような状況に自らを追い込んでおり,正直「下手を打った」としか思えない.これは厳しい.これに関連して「第12 岡山市の図書館のコスト体質について(東京都荒川区を参考として)」(p246-)が,明らかに貸出至上主義に基づいた図書館経営を前提にした論難になっているのが目を引く.監査人はあからさまには主張していないが,図書館利用者の欲求に基づいて蔵書構築をしていると考えられるのに,どうしてそんなに選書に時間がかかるのだ,と言いたいのではないかと推察される.

 また岡山県立図書館との役割分担云々が複数の箇所で言及されるが,これも【岡山県立図書館の利用好調 - 山陽新聞ニュース】という,県立図書館による利用者への直接サービスの充実が前提にあっての話であり,県立も市立も自らの設立母体の性格が違うことを棚上げして,公共図書館であるという見地から『市民の図書館』の敷いた路線に忠実に活動していれば,その性格がバッティングするのは火を見るよりも明らかな話だろうに.県単位で見たときの,公共図書館戦略の明らかな策定ミスであり,勉強の成果を実践したい監査人がツッコミを入れるのは当然過ぎるほど当然の話ではないかと.


 まあ,県立-市立の分担とか,貸出至上主義の見地からの業務へのツッコミとか,監査人はそれなりに勉強していることは確か.結局は,公共図書館業界のイデオローグが「均衡と秩序に基づいた公共図書館の発展」を理想とするあまりに強制的同一化(Gleichshaltung)を推し進め,他者に「言葉」が伝わらない現状を生んだんじゃないでしょうか.そして,それは他者の言葉が図書館業界は理解することができない,ということも同時に露呈させたことになりはしませんか.

 だから,「固有の言葉」じゃなくて「伝達のための言葉」を選び取らなければダメなんですよ.僕らが業界の外に向かって何かを語る目的は「折伏」ではなく「説得」であり,「理解」を得ることなのですから.この監査報告書に対して激烈なアジテーションで応戦したい方も業界にはおいででしょうが,図書館業界というインナーサークルで通用する言葉しか選び取れない,という時点で自ら敗北を選び取っているようなものです.いつまでも肥大化する自我のキャッチボールを無自覚無批判に繰り返してきたことが,業界に信仰に基づくインナーサークルを作り上げ,信仰に基づく言葉を「業務分析」だと判断してしまうような状態に自らを追い込んだのではありますまいか.図書館サービスを議論するにあたって,今や「政治的な右左」というかび臭い修辞は議論の外に置かれているのに,相も変わらず「左として批判されるワタシたちって素晴らしい」という無自覚な前提に浸っているようでは,自分たちが現在どのように周囲から観察されているのか,現実が見えてこないのではないでしょうか?

 この包括外部監査報告書に反論するのであれば,まずそこで如何様な公共図書館像が語られ,何が理想とされているのかを分析し考察することが必要だろうと考えます.いたづらに,ここで挙げられた細かい数字にこだわっても,反論としては何の意味もなさないでしょう.それ故「図書館経営論の教材として使うによく」と考えますが如何?

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