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2009/02/15

官尊民卑に弄ばれる「図書館の自由」

 昨年の今頃,【愚智提衡而立治之至也: 「法の下の平等」とレコメンドサービス】で俎上に載せた


田中,敦司
図書館は利用者の秘密を守る--カウンターで感じた素朴な疑問から (特集:図書館の自由、いまとこれから--新たな図問研自由委員会のスタートにあたって)
みんなの図書館 (通号 370),21~26,2008/2

が,最近そこここで取り上げられ,我が意を得たりと思ったことである.

図書館は利用者の秘密を守る-カウンターで感じた素朴な疑問から- - 読書ノートのつもり?なつれづれ日記
http://d.hatena.ne.jp/yoshim32/20090209/1234159904

それであなたはなにがしたいのか-田中敦司「図書館は利用者の秘密を守る-カウンターで感じた素朴な疑問から-」に感じた根本的な疑問 - ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版
http://d.hatena.ne.jp/arg/20090211/1234346362

その文章が掲載された「みんなの図書館」は言うまでもなく図書館問題研究会の機関誌である.それほど「図書館の自由」を金科玉条にしているはずの図問研が,最近明らかになった

容疑者と被害者情報漏らす 報道機関に東金市立図書館 - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/200901/CN2009012401000452.html

この件に関して,報道から3週間を経過した現在もなお,沈黙を守っているのは如何なる理由があってのことか.質問状に対する返答がない,というのは理由にならないだろう.記事に拠れば,この件を調査したのは日本図書館協会であり,図問研のメンバーにはこと「図書館の自由」について,日図協のイデオロギーを担っている人間も少なくないわけだから.
 また,2002年に発覚した,東京都の区立図書館において委託業者から派遣されていたカウンター要員が来館者の個人情報を悪用した件について,督促を怠業した公務員を弁護し委託会社とその派遣社員にすべての非を押し付け,そのことを指摘した意見に対し犯罪を使嗾してまで公務員の責任を回避しようとした東京の図書館をもっとよくする会の関係者もまた,この件については沈黙しているのである(なお,当時のコメントは注記も無く書き換えられ,犯罪を使嗾した箇所は改竄されているので現在では参考にならないことをお断りしておく).2002年の事件が「図書館の自由」に対する重大な挑戦(公務員による督促の怠業よりも罪が重い)というのであれば,東金市役所と東金市立図書館における,公務員による来館者の個人情報漏洩は,委託業者によるそれよりも責任が重いのではないかと思うのだが.

 共同通信の記事で気になるのは「調査に対し東金図書館は、一部の取材者が執拗に情報開示を要求したとしており、図書館関係者は、報道側にも利用情報の扱いに対する理解が必要だとしている。」というくだり.この,如何にも公共図書館に対して理解のありそうな文章だが,2002年の記事と比較してみると,論調の差異がわかると思う(エントリーの最後に全文を引いておく).日図協や図問研の指定管理者や委託に対する考え方,共同通信の関係者が「みんなの図書館」に連載を持っている事実などを考え合わせると,これは恐らく情報漏洩に対する報道機関への責任転嫁と公務員擁護のために(意図的にかどうかは別にして)執筆された文章ではないかと思われるが,どうだろうか?

 いずれにせよ,「公共図書館の民営化」などというデマゴギーを放送している団体に,公務員の罪を問わせることが,荷が重いのは重々承知の上で,それでもこの「図書館の自由」をめぐる公務員と民間への適用におけるダブルスタンダードについては,指摘しておかなければならないだろう.「図書館の自由」はあなたがたが「官尊民卑」という基準で恣意的に運用してもいいものだったのですか?


図書館で個人情報引き出す  他人の名前で返却督促  委託企業の派遣職員 2002.12.17 共同通信 (全633字)
 
 東京都江東区の区立図書館に、業務委託先の企業から派遣されていた職員が十一月下旬、利用者の個人情報を引き出し、その利用者の名前で「延滞CDが早期に返却されるよう借りている人に督促してほしい」と求めていたことが十七日、分かった。
 全国の自治体では、図書館業務の外部委託が広がっているが、派遣職員による個人情報の私的利用が判明したことは、こうした動きにも影響を与えそうだ。
 同区関係者らによると、十一月二十二日、区立東陽図書館に女性の声で「夫が予約しているCDの返却が遅いので督促してもらえないか」という趣旨の電話があった。たまたま電話を受けた男性職員が、女性が「夫」と告げた名の男性本人だったため、驚いた男性職員が問いただしたが電話は切れたという。
 男性職員の申告を受けた区が調査を始めたところ、二十五日夕になって同じ江東区の江東図書館に派遣されていた女性が、派遣元の図書館流通センター(TRC、東京都文京区)に「自分がやった」と話し、業務用端末から個人情報を引き出したことが分かった。
 女性はこのCDの貸し出し予約順が男性の次の二番目だったが、CDが七月から延滞で借りられなかったため、予約順位が一位の男性の妻を名乗り返却の督促を求めようとしたらしい。
 江東区は今春からカウンター業務などをTRCに委託、同社から区内の図書館に計百三十人が派遣されているが、委託業務には督促は含まれていない。
 TRC側は「担当者がいないのでコメントできない」としている。

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