レファレンス再考:その前提
レファレンス再考,というより図書館業務再考,であるか(^^;).
まず,「貸出」「レファレンス」「読書相談」「目録作成」などなど,従来言われてきた業務の区分を一度,見直したほうがいいんじゃないかと思う.特に「貸出」と「レファレンス」の間に,厳密な一線を画そうとしてきた考え方-現在もなお,その幻影が蠢いているようですが,この発想をまず疑ってかかれなくちゃ,将来の図書館業務の発展はないでしょう.このリンク先の内容については,ここでは過剰な現場主義が公共図書館を(歴史的,地域的)文脈から切断してしまっていることを指摘しておくに止めるけど.
目録作成については稿を改めるとして,対来館者サービス業務について(余談だけど,公共図書館を考える際に「利用者」という言葉には手垢が付きすぎていて,とても多様な意味を込めて使える状態にはなく,いろいろ考えた結果,利用対象は「住民」,公共図書館に来館する住民は「来館者」と取り敢えず呼称してみる),その枠組みを考え直してみる.「貸出」や「レファレンス」は,資料(情報)を来館者に提供するサービスの異なる手段であると捉えてみてはどうか.例えば貸出至上主義者のように,「貸出し」を目的とし他の手段を排除した形で成り立つ公共図書館サービスの展開は,高度成長期ならまだしも,世紀を越えた現在の社会状況を把握しているのであれば,そのような単純なモデルが成立する要件は現状,非常に限られている(恵まれている)ことが理解できるのではないか.公刊された書籍にせよ,一部の関係者のみに配布される灰色文献にせよ,情報(インフォメーション)として捉えればそれは限られたモノでしか無いし,現在流布している情報(インフォメーション)がすべて物理的な筐体を成しているわけではないのだから.
そういえば,「レファレンス」から始まる公共図書館利用,という表現をとると,「それはエリートのための公共図書館である」という反論が昔は来た(^^;).しかし,その批判は「エリート」という言葉の誤用なのではないか.曲がりなりにも民主制を標榜する国家の成員(=市民でも住民でも結構)が,与えられた/入手した情報(インフォメーション)を分析し「インテリジェンス(戦略情報,とでも言えばいいのか?)」に消化/昇華できない状態に置かれている,というのは学校教育の失態であろうし,市民に分析のリテラシーが備わっていることは,公共図書館業界が常日頃悲願としてきた「近代市民社会」の基盤ではなかったのか.情報(インフォメーション)の提供から始まる公共図書館の利用とは,民主制と近代市民社会を成立させるための,すぐれて基礎的な作業であると言えるだろう.
誤解されると困るので付け足しておくけど,「公共図書館」の存在自体が必ずしも民主制の基盤だ,とは思わないのだよね.ただあればいい,というものでもない.「公共図書館」を利用する市民の意識とリテラシーが,公共図書館を民主制の基盤たらしめている,という話なので間違えないで欲しいところ.
続くと思う(^^;).
« Mendelssohn: The Complete Masterpieces: CD 8 | トップページ | Mendelssohn: The Complete Masterpieces: CD 9 »
「図書館系」カテゴリの記事
- 小手調べ(2009.03.15)
- 「土佐派」の裏切り(^^;)(2009.03.07)
- 同床異夢(2009.03.02)
- 官尊民卑に弄ばれる「図書館の自由」(2009.02.15)
- レファレンス再考:インフォメーションとインテリジェンス(2009.02.14)
この記事へのコメントは終了しました。
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: レファレンス再考:その前提:
» レファレンス再考:インフォーメーションとインテリジェンス [愚智提衡而立治之至也]
承前. 以前の僕ならば,「貸出」と「レファレンス」を対抗させる形でレファレン [続きを読む]
» [編集日誌][ライブラリー・アカデミー]2009-02-17(Tue): 最終回を控えて−学びの共同体の可能性 [ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版]
約3ヶ月に及ぶライブラリー・アカデミー「インターネット時代のライブラリアン2008」が明日で終わる。 ・「ライブラリー・アカデミー「インターネット時代のライブラリアン2008」開講」(編集日誌、2008-12-03) http://d.hatena.ne.jp/arg/20081203/1228302837 ・「ライブ... [続きを読む]
« Mendelssohn: The Complete Masterpieces: CD 8 | トップページ | Mendelssohn: The Complete Masterpieces: CD 9 »
コメント