レファレンス再考:インフォメーションとインテリジェンス
承前.
以前の僕ならば,「貸出」と「レファレンス」を対抗させる形でレファレンスの優位性を説いたところですが,ところがどっこい,前振りで「枠組みを問い直す」とやってしまったので(^^;),この手は使えません.おまけに,そのような単純な二項対立で公共図書館経営を考えることは,「文脈から切断された〈象徴としての公共図書館〉」を想定しない限りは成立し得ないわけです.では,どのような考え方を以って課題にあたるか.
公共図書館に限らず,図書館は「少しく叩けば少しく響き,大きく叩けば大きく響く」という特性を持っていると考えているのですが,その叩き方というものが,社会において共通の合意/認識が取り付けられている,という状況ではないと思うのですよ.だからこそ,そのような「待ち」の姿勢ではいけない,という議論があるのは承知の上なのですが,それでもなお,図書館をめぐる「リテラシー」が一様ではなく,そもそも「リテラシー」自体が地域の歴史や現状に左右され,拘束されてしまう状況があることは,率直に認めなければならないでしょう.この点を把握しておかないと,図書館サービスを論じるときに大きな過ちを犯すことになります.誰とは言いませんが.
さて,これまでの「貸出」や「レファレンス」の分野に取り敢えず「資料提供サービス」という仮称を付けてみますが,これは要するにランガナタンの言う「利用者の時間を節約する」ためのサービスであると同時に,あくまでも情報(インフォメーション)を来館者なり,住民なりに提供するサービスである,という一線を引いておく必要があります.つまり「情報は自分で読んで,分析し,評価しなければ自分の役には立たない」(江畑謙介『情報と国家』講談社現代新書)ものであり,最終的に情報(インフォメーション)を「インテリジェンス」として何事かの役に立てるかどうかは,図書館がどれだけ有用な情報(インテリジェンス)であると判断して来館者に提供しても,来館者自身が判断を下さなければ何の意味もなくなってしまうものなんだろうと思うのです.
図書館が提供するのは「回答」であって「解答」ではない,と言われる所以です.図書館は,来館者が判断に着手するための情報(インフォメーション)の収集作業を手助け/肩代わりすることによって,来館者が収集に要するであろう時間を節約する役どころとなります.どの形式(書籍・雑誌・webなどなど)の情報(インフォメーション)が求められた回答に相応しいかまで,ある程度のスピードで分析・判断することによって来館者の時間的負担(ひいては心理的負担も)を軽減することが求められます.それには,卓越した情報収集能力と分析能力(求められている主題における専門家ではないとはいえ,得られた情報〈インフォメーション〉が疑似科学であるか科学であるかを見分けられる程度の分析は可能でなければならないでしょう)が必要です.ちなみにこの能力は,オタクとかマニアとか呼ばれる程度に趣味に耽溺していれば,応用が利く程度には身に付いている筈です(^^;).生かさない手はない.
・・・・・・と,ここまで書いて,文章を上手く〆ることが出来ない(^^;).気の利いた結語が書ければよかったのに.ここ2か月ほど,いささかスランプで長い文章をblogどころかリアルでも書いてなかったことを理由にしておこうか.
以下は今回,触発された記事(覚えているものだけですごめんなさい)
CHOTTO TOWN 図書館日誌: レファレンスを見直してみる
http://c-town.way-nifty.com/blog/2009/02/post-c129.html
CHOTTO TOWN 図書館日誌: レファレンスを見直してみる(その2)
http://c-town.way-nifty.com/blog/2009/02/post-6dd9.html
図書館雑記&日記兼用:レファレンス再考? - livedoor Blog(ブログ)
http://blog.livedoor.jp/lib110ka/archives/51854025.html
図書館雑記&日記兼用:「待つ」をやめる - livedoor Blog(ブログ)
http://blog.livedoor.jp/lib110ka/archives/51854753.html
ライブラリアンはBINARYの夢をみるか: ちょっと早急かもしれませんが・・・課題3「レファレンスの定義」
http://miffy-capybara.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-902c.html
これからのレファレンス(大学図書館) - かめの歩みとライブラリアン再考
http://d.hatena.ne.jp/makiko0812/20090213/1234529441
TB受け付けているblogには飛ばしてみますが,ココログは以前からTB上手く飛んでくれないので,送信できなかったらごめんなさいm(_ _)m
参考文献
« Mendelssohn: The Complete Masterpieces: CD 9 | トップページ | 官尊民卑に弄ばれる「図書館の自由」 »
「図書館系」カテゴリの記事
- 小手調べ(2009.03.15)
- 「土佐派」の裏切り(^^;)(2009.03.07)
- 同床異夢(2009.03.02)
- 官尊民卑に弄ばれる「図書館の自由」(2009.02.15)
- レファレンス再考:インフォメーションとインテリジェンス(2009.02.14)
コメント
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TBありがとうございます
図書館が出来ることを考え出すと、すごく広く、夢もアイデアも広がります。実現するまでの時間や手間はもちろんですが、たくさんの意見から、「今求められている図書館」を提供していけるように、したいものです。
投稿: ミッフィーかぴばら | 2009/02/15 21:12
>>ミッフィーかぴばらさん
コメントありがとうございました.
図書館って,まだまだ潜在能力があると思うのですが,いろいろな意味で「環境」が整っていないばかりに,能力を疑われ過小評価され疎んじられているところがあるようです.たくさんのアイディアから,いま出来ることをひとつでもふたつでも形にして,求めているひとのところへ届けられるといいですね.それを長く続けて重ねることが,信頼を得る第一歩なのですが,僕のところも力が及ばず,難しいものを抱えています.ふう(sigh).
めげずに前を向いていきたいものです.これからもよろしくm(_ _)m
投稿: G.C.W. | 2009/02/16 21:17