ヴァイル/小さな三文音楽
ヴァイル/小さな三文音楽(抜粋)@オットー・クレンペラー/ベルリン国立歌劇場管絃楽団(ポリドール/アルヒフォン:ARC-121/125)
1931年の録音.
クレンペラー(1885-1973)と言えば,晩年にフィルハーモニア管絃楽団(ニュー・フィルハーモニア)を振って残した録音から,大曲を雄大かつ剛直に振る巨匠,の印象が強いが,ナチが政権を掌握する前のベルリンではクロール・オペラというベルリン市第3の歌劇場を舞台に,様々な前衛音楽を戦闘的に上演する指揮者であった.この録音は,クロール・オペラが当局の圧力により閉鎖されたその年の録音である.
これが何というか,ヴァイルの音楽が当時どのように解釈され,演奏されていたかを伝えるだけではなく,ゲオルク・ヴィルヘルム・パプストによる映画「三文オペラ」などが伝える,ヴァイマール共和国当時の雰囲気をよく伝えてくれる演奏であることに驚かされる.ここでのクレンペラーは鈍重どころか,実に軽快に音楽を奏でている.
録音を主体にクラシックを聴いていると,どうしても「昔の指揮者はよかった」的な懐古趣味に陥りがちだが,この録音を評価するのは,ヴァイマール共和国に関する「歴史の証言者」としての価値を聴き取ることが可能であることによるところも大きい.大変に貴重なドキュメントである.
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