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2008/07/19

「財政難図書館、不要本に埋まる 寄贈募るが多くは廃棄」

asahi.com(朝日新聞社):財政難図書館、不要本に埋まる 寄贈募るが多くは廃棄

 ちと遅きに失したが,この記事について.

 善かれ悪しかれ,公共図書館の現場にいる図書館員の中で『市民の図書館』やその解釈(日本図書館研究会読書調査研究グループ等による)が正典化し,その解釈が教条化/硬直化しているのがよくわかる記事である.そもそも『市民の図書館』は選書論(あるいは蔵書構成論とも)において,「住民の要求に基づく選書」(「要求論」という)というあり方を打ち出し,それまでの「本の価値を判断する選書」(「価値論」という)を超克し,住民を公共図書館に呼び寄せることによって公共図書館の(住民と当局に対する)存在価値の向上と,それに伴う予算増を目指した政策文書だった(参考までに昔僕が書いたもの),というのが現行の(公式の)歴史的評価になるか.

 しかし,この記事に描き出される現状を読む限り,「要求論」とは「価値論」の1変種にすぎない(利用者の要求に至高の価値を見出す),という意見に同意せざるを得ない.何故なら,特定の本に予約が集中するのも住民の要求だが,


「もったいなくて捨てられない」と寄贈の申し出
があったこともまた,住民の要求であるにもかかわらず,こちらは「要求論」として処理されていない.それどころか

「専門的な教育本などが多く、図書館向きでなかった」
コメントした当人は「要求論」的物言いだと思っているかもしれないが,これはどう考えても「価値論」の物言いであろう.そこには,本と住民に対する明らかな二重基準と,それに気がつかない図書館員(とこの記事を書いた記者)における意識の断層が見える.

 この意識の断層は,元をたどれば,恐らく「公共図書館は設置母体/設置場所/規模の大小を問わず,みんな同一の思想と機能を有しなければならない」という発想にたどりつくのだろう,と思う.ひと口に「公共図書館」と言っても,設置母体/設置場所/規模の大小に応じて異なる機能や方向性を持たせるのは政策として間違っていないと考えられるのに,公共図書館の側から見るに,横並びを是とする小役人の体質と,視野狭窄な専門職集団が『市民の図書館』を正典化して,すべてを同一視してしまったのが,この断層の原因のひとつだろう(参考:ケペル先生のブログ: 兵庫県と全国図書館大会).誤った「単独館主義」(すべての公共図書館機能を単独の図書館ごとに担う)と言ってもいい.このため,例えばデポジット・ライブラリー(保管図書館)の考え方が充分に行き渡らず,専門職集団の思想と行動が却って公共図書館の衰退に手を貸すことになってしまったのは,何とも皮肉なことである.


 転回点となるべき箇所は,僕が業界に関わるようになってからでも何度かあった.京都市立図書館の財団委託が問題視されたとき,浦安市立図書館の活動が脚光を浴びたとき,津野海太郎が「図書館雑誌」の巻頭論文を書いたとき,「○○支援」が公共図書館の機能として注目されたとき・・・・・・.それをことごとく外した挙句に,「これからの図書館像」すら押さえているとは思えない新聞記者によって,『市民の図書館』のプロパガンダ記事が書かれるのだから,公共図書館におけるこれからの展望は,住民にとっても公共図書館にとっても,あまり明るくは無さそうである.

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