J.S.バッハ/ミサ曲ロ短調
J.S.バッハ/ミサ曲ロ短調BWV232@ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィル(DG:459 460-2)
1973年9月,11月と1974年1月の録音.
この録音,J.S.バッハの演奏においてカール・リヒター命! のひとや,古楽が絶対! のひとは,決して聴いてはいけません.音楽を聴いて滅多に動揺することの無いこの僕でさえ,最初にこの「キリエ」が我が家のオーディオで鳴り響いたときには,あまりのことに椅子から転げ落ちそうになりましたから.
もちろん,カラヤンが奇を衒った解釈で聴き手を驚かせるはずも無く,かと言って新しい発見/解釈を聴かせるわけでもなく,ただひたすら全盛期のカラヤン/ベルリン・フィルによる中庸のテンポで,音楽の内面を厳しく拒否し,外面をひたすらに磨き上げることで音楽の内実を却って浮かび上がらせようとする戦術は何時もの通りです.が,この場合相手はJ.S.バッハであり,その方法論がJ.S.バッハに対してはあまりにも場違いであることに驚愕したのですよ.カラヤンの創り出す音楽の内容が空虚なのではなく,バッハの音楽があまりにも「音楽そのもの」以外のものを表現していないことが,この演奏を凄絶なまでに居心地の悪いものにしている,と僕は聴きます.
かくして,あまりにもきらびやかな演奏であるこのロ短調ミサは,ヘルベルト・フォン・カラヤンという稀有の才能によって創られた完璧なオーケストラ・アンサンブルが採った方法論の限界を,まざまざと僕らに聴かせることになっています.
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コメント
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うげげ。では、基本的に古楽命だけどバッハに関してはリヒターが絶対!なワタシなんかは死んでも聴いてはいけないですね。肝に銘じます。
それにしても下記エントリでぶっ飛びました。ハルモニア・ムンディ、50周年すかー?!!!! 30周年の記念盤5枚組ってのを買ったのはさほど昔ではないはず。……と言いつつ、20年経っちゃったんですね……orz どうりでわしらが年を取るはずじゃ。げほがほごほ。20年経った今、「レニングラード」も「単なる西欧の一都市」になっちゃいましたorz ビジネスをする人にとってはいいのかもしんないけど、ちょっとつまんなくなりました。
投稿: ふみお | 2008/04/30 22:59
>>ふみおさん
お帰りなさい(^^;).無事にご帰還,何よりです.
で,DHMの50周年50枚組,初回限定だそうですが,恐らく店頭では5000円強で販売していると思いますので,見つけたら「買い」ですよ.バッハはもちろん,「バッハ以前のトマス・カントル」などというマニアックなものまで入っているというスグレモノです.フレスコバルディやペルゴレージやビーバーはあるのに,何故かヘンデルが1枚も無いのが不思議なところです.
カラヤンのバッハは,初めて聴いたのですが,これほどとは思いませんでしたです(^^;).何とか「マタイ」と「ブランデンブルク協奏曲」は入手できたら聴きたいと思ってますが,聴きとおせるかどうか? このロ短調も1枚目(「キリエ」「グローリア」)を聴くのがやっとだったので.いやー,スゴイわorz
投稿: G.C.W. | 2008/05/01 22:56
>恐らく店頭では5000円強
まぢですか?! あまじょんでもマーケットプレイスで9000円近いですが……。ううむ、ちょっと店頭を回ってみよう。情報ありがとうございます。
カラヤン、そこまでくるとかえって聴いてみたくなりました(笑)。気力と体力があるときに挑戦してみようかな……
投稿: ふみお | 2008/05/01 23:35
ゴメン,タワーレコードの店頭に残っていれば,です.
僕はタワレコ郡山店にて5370円で入手しました.
投稿: G.C.W. | 2008/05/01 23:46
新宿でゲットしてきましたー!
投稿: ふみお | 2008/05/02 17:00
あ,よかったよかった(^^;).あの50枚,ホントにラインナップがスゴイので,古楽好きな方にはたまらないと思います.
普段,あまり聴かない僕が即買い(!)でしたから.
楽しんでくださいませ(^^;).
投稿: G.C.W. | 2008/05/07 22:31
でもハルモニア・ムンディ・フランスが出してるほう(こっちは一万円越える)も気になるんですよね(笑)。ラインナップ的にはこっちのほうが好み……だけど、すでに持っているものともちょっとかぶる。ヘレウェッヘのベルリオーズなんていう、「どうするよ!」みたいなものも入ってるし(笑)。ああっ……(悩)
投稿: ふみお | 2008/05/08 11:09