モデルの破綻
結局,田井郁久雄氏のようなヒトがどう糊塗しようと,『市民の図書館』や『本をどう選ぶか』による公共図書館の経営モデルはとっくに破綻しちゃっている,ということでしょう.
資料購入費の増額を目的とした,前川恒雄や伊藤昭治の生み出したモデルに従って如何に貸出を増やしても,経済が右肩下がりの現状では正規の税収が上がらない以上,公共図書館の資料購入費だけが上がる筈も無く,それでも前川や伊藤のモデルにしがみつけば,蔵書構築=選書のコントロールを正規の図書館員が手放すわけにはいかない(故に,内容の如何を問わず寄贈を大々的に活用し,結果的に60万冊を集めた「全国ありがとう文庫」や42万冊を集めた「矢祭もったいない図書館」などの,素人が考案したモデルは採用できない)となれば,正規の税収以外の収入源を何処かで確保しなければならなくなる.ところが悲しいかな,これまで「広報」「広告」「宣伝」というものの作り方を学んでこなかった-これは彼らが公務員だから,というよりは前川たちのバックボーンにある「正しいことをやっていれば必ず報われる」という,ある種のストイックな姿勢から来るものでしょう-それが次の事例に見られる「空回り」と言うか,結果として努力が報われないばかりか,その手法を採用するまでの思考法さえも疑わせることになる,原因のひとつを作り出しているのでしょう.
【斐川町立図書館:財政難、募金1円も集まらず 図書購入費「みんなで育てて」 /島根 - 毎日jp(毎日新聞)】
【斐川町立図書館>お知らせ - 募金箱の設置について】
【斐川町立図書館からのお願い 図書購入に愛の手を!】
【広報媒体としての図書館サイトの価値 - Copy & Copyright Diary】
【平塚市図書館 みんなの掲示板】
高度成長期に生み出された公共図書館の経営モデルからの転換を,どのように組み立てていくのか,これからしばらくは「これではうまくいかない」という事例を幾つも積み上げていくことになるのでしょう.そして,その失敗から,何かを見つけ出し,新しいモデルを得るのが現場の知恵でもあり,学者の仕事でもあるはずです.
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