ドヴォルジャーク/チェロ協奏曲ロ短調
ドヴォルジャーク/チェロ協奏曲ロ短調作品104@ムスティラフ・ロストロポーヴィチ&エフゲニ・スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立交響楽団(BBC:BBCL4110-2)
1968年8月21日,ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ録音.
1968年8月20日の深夜,ソ連軍はチェコスロヴァキアに侵攻・占領し,いわゆる「プラハの春」と呼ばれたチェコスロヴァキア共産党による改革路線を共産主義の親玉たるソ連が叩き潰した,その当日にUKで敢行されたソ連の演奏家による凄絶なライヴの記録である.ロストロポーヴィチ自身がこの録音について,このCDに簡単な手記を寄せているが(2002年10月付),ロイヤル・アルバート・ホール中の数千人の聴衆が「Soviets go home!」と叫び,ソ連に対する抗議を表していた由.この録音の冒頭にも,何を言っているのかはよくわからないが激しい叫び声が残されている.もっとも,手記に拠れば反対側のバルコニーからは「Go to your basket!」と言い返す観客もいたという.ロストロポーヴィチも演奏中に投石があるのではないかと心配したほどで,演奏会前にマネージャーは彼の弾くチェロに保険をかけたとか.「私の人生の中でもっとも厳しい演奏会のひとつでした」
演奏は,張り詰めた雰囲気の中,さすがに前のめり気味に始まるが,第2主題にさしかかるあたりでは落ち着きを取り戻し,と言っても非常な緊張感の中,胃の痛くなるような演奏が展開される.演奏中の観客は抗議行動を起こすことも無く,そして終楽章,最後のティンパニが鳴らされるとともに,ものすごい大歓声に包まれるのである.
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