プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第4番
プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第4番変ロ長調作品53@アレクサンデル・トラーゼ&ヴァレリー・ゲルギエフ/キーロフ管絃楽団(フィリップス:PHCP-11089/11090)
1996年7月の録音.
例のパウル・ヴィトゲンシュタインに「この曲のどの音符も理解できません」と拒絶された,左手のためのピアノ協奏曲である.そのまま埋もれてしまい,プロコフィエフの死後,その作品表からこの作品を見つけ出した東ドイツのピアニスト,ジーグフリート・ラップ(1917-)がプロコフィエフの遺族からスコアの提供を受けて,1956年9月5日にようやく初演された.第二次大戦で右手を失ったピアニストであったラップによる録音も残されているが,僕は未聴.この録音のときなのかどうかはわからないが,ラップには録音中にディレクターから「ラップさん,そこはもう少し右手を効かせてください」と言われた,というエピソードがある.
曲は4楽章からなる.如何にもプロコフィエフらしい,諧謔交じりの急速な楽章を両端に置き(しかも第4楽章は第1楽章のダイジェストみたいな内容),冴え冴えと美しくありながらラフマニノフ風の厚ぼったいロマンティシズムを慎重に避けているかのような第2楽章と,ちょっと不思議な感触の行進曲風な第3楽章からなる.確かに古典的な協奏曲の形式からは逸脱した奇妙な形の協奏曲ではある.演奏は,いささか正攻法で真面目に押し過ぎているような感じ.
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