ブルックナー/ミサ曲へ短調
ブルックナー/ミサ曲第3番へ短調@ハインツ・レーグナー/ベルリン放送交響楽団(東ベルリン)(エーデル:0002712CCC)
1988年9月の録音.
ヴィーンの宮廷礼拝堂で演奏するために,オーストリア帝国の宮内省から委嘱された作品である.既にオルガニストとしてパリやロンドンでも大成功を収め,ニ短調とホ短調のミサ曲も作曲していたブルックナー(1824-1896)が自信を持って作曲した・・・・・・,と言いたいところだが,この作曲家にはどうにも不運と自信喪失が付いて回る.この作品を作曲していた当時も,交響曲ニ短調(第0番)は「(第4楽章の)主要主題はどこにあるのかね?」と疑問符を付けられて机の中にしまいこまれ,1869年9月にリンツで初演され大成功を収めたホ短調ミサは結局,作曲家の生前にはヴィーンでは演奏されずに終わる,と言った有様.このヘ短調ミサも,1868年に完成するも初演まで4年を要している.さすがに1872年6月に初演された際は成功を収め,エドゥアルド・ハンスリックの激賞もあってブルックナーは宗教音楽の作曲家としてはヴィーンでも認められるようにはなる.しかし,交響曲の作曲家としてのブルックナーが認められるようになるまでには,ここからまたしても長い道のりが待っているのである.
さて,どういうわけだか,ブルックナーの交響曲の録音では軟体動物のような演奏を連発し,疑問符の多い解釈を繰り広げるレーグナーの棒が,この作品では水を得た魚のように生き生きと,劇的なミサ曲の再現に成功している.何か,声楽作品については勘所を掴んでいたのだろう.
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