陳鋼&何占豪/梁山伯と祝英台
陳鋼&何占豪/ヴァイオリン協奏曲「梁山伯と祝英台」(蝶の恋人たち)@西崎崇子&ファン・チェンブ/上海音楽学院交響楽団(ナクソス:8.554334)
1992年10月の録音.
「梁山泊」ではなく「梁山伯」で正しい(^^;).東晋時代に民話として起こったのが始まりという,悲恋の物語で古来中国では有名なものらしい.その物語を取り上げた越劇の旋律をモチーフに,1958年に上海音楽学院に学んでいた陳鋼と何占豪という二人の若い作曲家が「中体西用」(「和魂洋才」の中国版か)の理念を具現化すべく作曲したのが,このヴァイオリン協奏曲である.ところが,1966年から始まった文化大革命にて,上海音楽学院は徹底的に目の敵にされてしまい,この作品もほとんど忘れ去られかけていたもの.さしもの文化大革命が終息した後は復権し,長野オリンピックでは女子フィギュアスケートで中国の選手がこの作品を採用して銅メダルを獲得している.
曲は,もう情緒纏綿たる正統派(?)の民族音楽をそのまま西洋のヴァイオリン協奏曲の様式に載せた,という態の作品で,実に親しみやすい音楽(^^;)に仕上がっている.「梁山伯と祝英台」は,さすがに中国で最初に洋楽が根付いた上海で学んだ作曲家が作曲しただけに,管絃楽法などに破綻は無いが,技法的には台湾生まれで東京音楽学校に学んだ江文也の戦前の作品の方が,問題意識において優れていると思われるところはある(それ故,江文也は日本敗戦後の中国で受け入れられずに苦難の道を歩むことになるのだが).
ところで,ストーリー性はともかく,日本でも同じような音楽作法でヴァイオリン協奏曲を書いた作曲家がいたよな,と思い出したのは貴志康一のそれだった.いずれにせよ,西洋生まれの枠組みを中国(あるいは日本でも)根付かせるのには,それなりの道を一通り歩かなければならないのだろう.
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