W.A.モーツァルト/ピアノ・ソナタK.311
W.A.モーツァルト/ピアノ・ソナタ イ長調K.311@エリー・ナイ(コロッセウム:9025-12.2)
1964年の録音.
2008年に没後40年を迎える,両大戦間に正統派のベートーヴェン弾きとして勇名を馳せ,ヒトラー崇拝者でもあった(故に晩年は不遇であった)大ピアニスト,エリー・ナイ(1882-1968)最晩年のステレオ録音で,モーツァルトの「トルコ行進曲付きソナタ」を.録音が多少古ぼけてきており,高音や強音で時々割れるのが何とも惜しい.
ベートーヴェン奏者としては,その雄渾なピアニズムを最晩年まで保持し続けたナイですが,このアマデウスはひたすらかわいらしく,下世話な表現をするならば「カマトト」ぶって弾いているんじゃないかしら(^^;).もちろん,K.311をベートーヴェンの最後の3つのソナタのように壮大に(鈍重に)弾く必要もないわけで,そのあたりはキチンと弾き分けているわけですね.
ただ,正直,脂肪っ気の抜け切った音による,枯淡の境地に遊ぶピアニズムで,昨今の刺激の強いピリオド楽派的なアマデウス演奏に慣れた耳には面白くない演奏なんじゃないかなあ,と思わないでもないですね.今のピアニストなら,もっと水際立った演奏を聴かせるに違いないでしょう(特に第3楽章).
でも,「古典」を古典らしく弾く,というのはこのような演奏のことなのでしょう,という説得力は充分に持っています.そのような意味では,大ピアニストとしての矜持は最後まで持ち続けたのかなあ,と.
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