ヨハン・シュトラウス1世/ラデツキー行進曲
ヨハン・シュトラウス1世/ラデツキー行進曲作品228@ハンス・クナッパーツブッシュ/ヴィーン・フィル(デッカ:440 624-2)
1957年録音.当時のデッカ独特の生々しい音で録られている.演奏は指揮者の名前から想像できる通りの,威儀のある荘重なもの.
この行進曲はヨハン・シュトラウス1世(1804-1849)が1848年8月,「イタリア戦線での勝利と傷病兵のため」の演奏会で初演された.ヨーゼフ・フォン・ラデツキー伯爵(1766-1858)率いるオーストリア帝国軍のサルデーニャ王国軍に対する勝利と凱旋を祝して作曲したものである.当時のヴィーンは,メッテルニヒ政権を打倒した3月革命の余韻が今だ覚めやらず,労働者と学生を中心とした革命派は先鋭化し次第に孤立していた.最終的には同年10月にフランツ・ヨーゼフ1世によって革命派は鎮圧されることになる.革命勃発当初は革命派のために音楽を書き,革命派を鼓舞していたシュトラウス1世だが,この頃には革命派から離れており,ハプスブルク家を支持する市民階級の側に廻っていた.そこで,ラデツキー伯爵の凱旋を祝う行進曲を書いてハプスブルク家への支持を明らかにしたわけだが,このことによって失ったものも少なくなかったらしい.
この作品,行進曲,と言ってもスーザのそれのような軍楽隊のためのものではなく,目的が示すようにセレナードの伝統を受け継いだ祝祭的な性格の音楽であり,そのリズムは当時流行していた「カドリーユ」という舞踏のものを用いている.現在では当初の目的など忘れ去られてしまい,ヴィーンの「ニューイヤー・コンサート」の掉尾を飾る名曲として,華やかに明るくコンサートに華を添えている.
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