ブリテン/戦争レクィエム
ブリテン/「戦争レクィエム」@ヘルベルト・ケーゲル/ドレスデン・フィル(ドイツ・シャルプラッテン:TKCC-15165)
1990年の録音.東ドイツで活躍した指揮者ケーゲル(1920-1990)はこの作品を録音した直後,ピストル自殺している.東ドイツという,官僚的で保守的な共産党政権下の国で,新ヴィーン楽派などの現代音楽を果敢に取り上げていた.何度か来日して日本のオケも指揮しているが,日本で現在のようなカルト的な人気を獲得するのは,その死後に一部の評論家がその「猟奇的なほどの美の追求」を褒めちぎってからのことである.
この作品は1962年5月30日,UKのコヴェントリーで第二次大戦中のドイツ空軍による空襲で破壊された聖ミカエル教会の再建がなった,その献堂式にて初演された.ブリテンは,この作品のソリストにそれぞれ特定の歌手,即ちヴィシネフスカヤ(ソ連),ピアーズ(UK),フィッシャー・ディースカウ(ドイツ)を想定していたが,諸事情によりヴィシネフスカヤは初演に参加できず,のちにブリテンの指揮でこの作品が録音された際,初めて演奏に参加する.
その録音は「戦争レクィエム」の最高の名盤として指揮した作曲家自身が満足したというほどの出来栄えだったのだが,それを高校生のときに某県立図書館から借りて聴いた僕には,その崇高な目的はともかく,さっぱり音楽が理解できなかったことを,ここに正直に記しておく.それから20年以上,ブリテン自身の録音を聴いていないので,今ならば,また異なる感興があるのかもしれない.
ケーゲルの演奏は,非常に繊細で神経質で,鬼気迫る緊迫感を以ってこちらに訴えるものがある.それが,ブリテンがこの作品の冒頭に掲げたウィルフレッド・オーウェンの言う「警告」なのだろう.ケーゲルの悲劇的な最後を考え合わせると,この言葉もなかなか重層的な意味合いを持っているような気がする.
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