ペンデレツキ/広島の犠牲者に捧げる哀歌
ペンデレツキ/広島の犠牲者に捧げる哀歌@クシシトフ・ペンデレツキ/ポーランド国立放送交響楽団(EMI:3 81508 2)
1975年2月の録音.
1960年に初演された,ポーランドの作曲家ペンデレツキ(1933-)の国際的な出世作にて,「トーン・クラスター」なる技法を一躍世に広めるきっかけになった作品である.最初は「8分37秒」という演奏時間を指定しただけの標題だったものが,再三にわたる変更の末に現行の標題に落ち着く.当時においては衝撃的な標題と,衝撃的かつ前衛的な音楽技法でペンデレツキは一躍,前衛音楽の代表的な作曲家になる(ちなみにこの録音は9分54秒かかっており,当初の指定より1分以上遅いテンポ).
その前衛的な音楽と名声は「ルカ受難曲」(1966年)で頂点に達するが,この作品を転回点としたかの如く,その後のペンデレツキの作風は「新ロマン主義」と言われるものに移行していく.現在では「前衛」どころか,来日公演でドヴォルジャークの交響曲第8番を楽しげに指揮するひとに変貌してしまっている.評者によって「堕落」「改心」と様々言われているが,この作品の標題が二転三転したことからでも,この作曲家がいわゆる「前衛的技法」を当初から(数ある作曲法のひとつとして)その価値を並列的に捉えていたんじゃなかろうか,というのが僕の仮説.
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