深井史郎/ジャワの唄声
深井史郎/交響的映像「ジャワの唄声」@ドミトリ・ヤブロンスキー/ロシア・フィル(ナクソス:8.557688J)
2004年10月28日から11月2日の録音.
深井史郎(1907-1959)は戦前派の日本の作曲家の中でも,もっとも批判的精神が旺盛で皮肉と諧謔と韜晦を専らとしたひとりである.没後に編纂された『恐るるものへの風刺』(音楽之友社,1965年出版)を読んだことがある方なら,ある程度はそのことが理解できるのではないかと思う.
だから,この作品がいわゆる「大東亜共栄圏」の理想に忠実な主題を持ち,「大東亜戦争」中の1942(昭和17)年9月に完成し翌年初演(ちなみに初演を指揮したのは朝比奈隆)・録音された作品であるにも拘らず,実はその骨格がモーリス・ラヴェルの「ボレロ」そっくりだったとしても驚くにはあたらない,というのがひとつ.さらに片山杜秀が執筆したこのCDの解説に拠れば,ラヴェルの「ボレロ」は当時の日本の作曲家が,日本的な音楽作品を書く際の素晴らしいお手本だった可能性が強いらしい,というのがもうひとつ.
ただし,この作品が「ボレロ」と異なるのは,「ボレロ」のように高揚して終わるのではなく,高揚の後に静かな終結部が付いてポツンと終わってしまうところである.これが予言なのか,美意識の問題なのかは,今となってはわからない.
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