ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73@ヴィルヘルム・ケンプ&ペーター・ラーベ/ベルリン・フィル(DG:POCG-6073)
1936年の録音.20世紀を代表する名ピアニストのひとりでベートーヴェン弾きとして鳴らしたヴィルヘルム・ケンプ(1895-1991)による,最初の「皇帝」の録音である.
が,それよりも何よりも,この録音はリヒャルト・シュトラウスがナチの作った帝国音楽院の総裁をクビになった(1935年6月)あと,帝国音楽院総裁を務めることになる指揮者ペーター・ラーベ(1872-1945)の演奏が聴ける唯一のCDなのであった.このCDの解説書がケンプのことばかり書いていてラーベに一言も触れないのは,偶然なのか当然なのかはよくわからない.まあ,ラーベとナチの関係を述べれば,ケンプもまたナチ時代のドイツで活躍していたことに触れないわけにはいかなくなるから,ラーベについては無視を決め込むことでケンプの栄誉を守ろうとしたのであろうか.
ラーベはアーヘンの音楽総監督を辞職したところでゲッベルスからお声がかかり,帝国音楽院総裁を引き受けたのだが,アーヘンを辞職した理由は,地味な自分の音楽が颯爽と派手な指揮ぶりで登場したヘルベルト・フォン・カラヤンには到底かなわないことを悟ったからだったらしい.確かにこの録音で聴くことの出来るラーベの指揮は,純朴で実直なものであり,地道にまとめてはいるものの,派手な演出や見栄には無縁であったようである.フランツ・リストの研究で博士号をとった立派な業績もある(リストの作品表で使われることのある「R」番号は,ラーベのふったもの)人物だったが,熱烈なヒトラー支持者であり,ナチの文化政策を推進したひとりでもあった.1945年4月12日,ナチの崩壊直前に死去するが死因は自殺説もあるとの由.
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