シューベルト/ミサ変イ長調
シューベルト/ミサ変イ長調D.678(第5番)@ヴォルフガング・サヴァリッシュ/バイエルン放送交響楽団(EMI:5 73365 2)
1980年1月の録音.完成度は非常に高いものだが,どうも独唱陣(ヘレン・ドナート,ブリギッテ・ファスベンダー,フィッシャー・ディースカウら)が強力に過ぎて,シューベルトのこの手の作品に顕著な夢幻の雰囲気を,現実主義的なものに引っ張っているような気がする.元来サヴァリッシュの指揮がベームをさらに即物的にしたと言うか,ブルーノ・ヴァイルのような古楽派ほど「身も蓋もない」ものではないにせよ,現実的なものではあるのだが.かろうじて合唱だけが,シューベルトの夢幻な雰囲気をかすかに醸し出している.
もっとも,シューベルトは必ずしも宗教的な人間ではなく,この作品もある意味現実の「出世」を狙って作曲したものであるのも確か.そして,その意欲が当時の皇帝の好みを反映した凡百のミサ曲を差し置いて,現在でもこの作品がこうして録音される衝動を演奏家にもたらしているとすれば,こうした現実主義的なシューベルト演奏にも何ほどかの真実が含まれているとも言えそうである.
なお,明日の晩はココログがメンテナンスを決行(!)するので,恐らく更新しません.
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