ベートーヴェン/ウェリントンの勝利
ベートーヴェン/交響曲「ウェリントンの勝利,あるいはヴィットリアの戦い」作品91@アンタル・ドラティ/ロンドン交響楽団(マーキュリー:434 360-2)
1960年6月の録音.わざわざニューヨークはウェスト・ポイントにある合衆国陸軍学校からナポレオン戦争当時の青銅製のカノン砲とマスケット銃を借り出して使用するという凝り性な録音である.
この作品は1813年6月13日にウェリントン公がスペインのヴィットリアでナポレオン軍を大破したことのお祝いとして作曲される.元々は「パンハルモニコン」というヨハン・ネポームク・メルツェル(1772-1838,メトロノームの発明者として音楽史に名前を残す)が発明した大型の自動合奏楽器での演奏を想定した作品で,この頃メルツェルがベートーヴェンと計画していたイギリス旅行で披露するのが目的だったという.
ベートーヴェンはパンハルモニコンのみならず,普通の管絃楽(ただし,ほぼ4管編成という大型のオケ)でも演奏できるようにした編曲譜を作った.管絃楽版が出版されたのと同時期に出版された様々な編曲版(トルコ風軍楽,絃楽五重奏,ピアノ三重奏,2台ピアノなど)にどの程度作曲者自身が関与していたのかは,手元の資料ではあまりよくわからない.初演時に演奏されたのは管絃楽版で,中心に大オーケストラを,左右にUK軍とフランス軍を象徴する軍楽隊を配置する,おまけに本物の火器を使用する,という当時のベートーヴェンにしては芝居っ気たっぷりな(^^;)舞台構成をとる.
曲調は実に娯楽的,というか,肩の凝らない音楽で,実際にカノン砲やマスケット銃が炸裂していても,肉弾相打つ,と言うよりはどうにも剣道の練習をやっているような雰囲気で進むのが,何やらウェリントン公,あるいはナポレオン麾下の将軍たちの華麗な肖像画を連想させて,どこか可笑しい.この作品が大当たりをとった,という話がわかるような気がする.
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