バラケ/ピアノ・ソナタ
バラケ/ピアノ・ソナタ@シュテファン・リトウィン(cpo:999 569-2)
1997年10月の録音.
ジャン・バラケ(1928-1973)はピエール・ブーレーズなどと同じような立場から出発しながら,次第に独自の難解な理念と手法を展開するようになり,結局は当時の前衛たちをも越えてしまった孤高の作曲家.完璧主義故に生前発表した作品はたったの7つで,そのうち後半の4作はヘルマン・ブロッホの『ウェルギリウスの死』という小説に基づく長大な作品のそれぞれ一部分をなすはずのものだったという.このソナタが収録されている3枚組のCDは,バラケの「作品全集」(!)なのである.
『ウェルギリウスの死』以前の1952年に作曲されたこのピアノ・ソナタは2楽章ながら50分を超える大作で,公開初演までに15年もかかった難曲.聴いていると,どうも演奏会で聴衆に聴かせることは想定していないんじゃないか,と思わせる.「セリー技法」などの音楽技法に精通していない素人がこのような作品を聴くときは,リズムや音色,音響の衝突がどれだけ多彩か(オリヴィエ・メシアンの『トゥーランガリーラ交響曲』を想起されたい)を聴くのが関の山,といったところだが,この作品は基本的に静謐で求心力の強い音楽であるものの,ところどころで切れ切れに展開されるリズムや音響の衝突が,何とか聴く側の意識を作品の側に向けさせる.
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