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2007/05/31

御奉答草案

 先日のご下問に対し,下記の通り奉答いたします.

 (前略)年度によって在籍している学生の気質も若干異なるようには見受けられますが,ここ数年の傾向としては
・「知識」を尊重しない
・安易に解答を求める
・読書による「人格の陶冶」を考えていない
以上のような特徴を持った学生が徐々に増えていると,日々図書館のカウンターにて学生に接している身として感じております.

 既に10数年前から,高校卒業までに地元の公共図書館や小中高の学校図書館を利用したことの無い学生が多く入学してくる傾向はありましたが,それでも数年前までは図書館職員の教育的な指導により,徐々に図書館を利用することに慣れていく学生は少なからず存在しました.ところが,昨今はインターネットの普及もあってか,書籍や雑誌を通して多くの知識を獲得することを喜びではなく,苦痛に感じる学生が増えているのではないかと考えております.ある事象について,文献を博捜することによって過去に導き出された,複数の知識を得ることによって自ら考える,ということを放棄し,インターネットを検索して得たただひとつの情報を解答=知識として捉えている,斯様な知識の獲得に対する安易な姿勢が,知識を尊重せず,さらには知識の共同体であるところの図書館,また図書館利用と知識の水先案内人たる図書館職員を軽んじる学生の増加につながっているのではないかと愚考いたします.

 ただし,先程申し上げましたように,昨今入学してくる学生は必ずしも生育暦の中で,充分に公共あるいは学校図書館を利用する経験を積んできたとは言い難いところがあります.そのため,図書館の中でも特に「大学図書館」という存在そのものに対する知識が稀薄であることは否めないようです.数年前より大学図書館において「ライトノベル」「ケータイ小説」などの,中学生・高校生を対象にした軽読書用の書籍(注記省略)を求める学生が若干とは言え存在するのは,「大学図書館」という存在が大学において,学生において,勉学において,自らの人生において如何なる意義を有するか,ということを学生が知らないからではないかと考えます.

(中略)

 いまひとつの課題は,半年を1サイクルとして廻っているような分野(情報関連分野など)の関連書籍の扱いです.このように発展の速度が速い分野の書籍を大学図書館が蔵書として購入・保存するのは,現状では躊躇せざるを得ず,そのような分野については出来る限り電子ジャーナルを含む雑誌媒体にて対応したいと考えております.

 最後に「人格の陶冶」ということについて,一言申し上げます.教員が学生にレポートを課せば課すほど大学図書館に学生が来館して資料を利用するようになる,という好循環が期待できる時代は3年ほど前に終わってしまったのではないか,と考えています.その原因は言うまでもなくインターネットの急速な普及と,それに伴う検索機能の充実ですが,それは技術が発達したことを意味するにすぎず,検索した結果を取捨選択するだけの判断力の基礎になる知識は,先に触れましたように軽視され,ひとつの問いに対して複数の資料に当たり,その差異を読み取り,問いに対して最適な回答を判断するだけの知識の蓄積は,現在の学生には無いと考えるのが妥当でありましょう.知識の獲得と蓄積とを,苦痛ではなく喜びに変えるのは,人格の陶冶ではないかと考えます.これは人生の経験が何より大切な要素であり,(中略)大変な困難が伴うことではありますが,その困難を補うのが「読書」,それも古典に親しむことではないでしょうか.

 森銑三はその名も『書物』という書籍で,このように述べております.


「私等はただ書物を通して,過去の賢哲にも相対する.その人の著書を直ちにその人とも見ることが出来る.そのひとを尊敬する心があるならば,その人の遺著をもまた尊重すべきである.」
そのような心を養うこともまた,専門書を揃えるのみにとどまらない,大学図書館の大きな使命であると考えております.

 以上,至らない点も多々あるかと思いますが,ご下問に対する奉答といたします.

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