図書館に思想善導を期待する人々について
【森藍亭日乗: 「真実教」に帰依した教育改革者】
【good2ndの日記 - 図書館に所蔵資料の訂正を求める戸井田とおる議員】
開いた口がふさがらないとはこのことだ(-_-;).随分と民主制とそれを支える諸制度・組織に無理解な方が国会に国民の代表として登壇しているのだなあ,と恥ずかしくなってしまいましたね.この議員さん,プロフィールを見たら,法学部卒業だそうですがにわかに信じられない.上に挙げたblogに見る限り,この議員さんはそれほど民主制というものがわかってらっしゃらないし,議員さん個人のサイトやblogを眺めても修正主義の徒のようで,戦前への郷愁と回帰は明らかであり,安倍首相の唱える「教育改革」にご執心だと伝えられるのも当然でしょう.
それにしても,この議員さんの場合は国立国会図書館に
という,民主制も学問の自由も表現の自由も踏みにじる,如何にも「原理日本」風な笑うべき珍要求をされているわけですが,翻ってこちらはどうでしょうか.
「国会議員が調査に当たる、その中心の場である国会図書館の資料に、明らかに間違いだ、一次資料で確認できる、そういうものについてはきちっと訂正をしていただきたい。」
【ハンセン病人権問題 図書件名が私たちに問いかけるもの - 早稲田大学図書館】
意思のベクトルの方向性が片方は修正主義史観,他方は善意の発露と違いこそすれ,このふたつの要求は図書館に対して,図書館がある種の資料について正誤の判断を主体的に下し公告/啓蒙すべきことを求めている点において,まったく同じことを述べていると僕は考えます.民主制や学問の自由や表現の自由を軽視する反知性主義の異なる方向での噴出であると.
「「癩 は当館の目録では使われていません」について、何故そうしているのかの説明があればうれしいのですが」
僕が恐れていた事態が現実のものになりつつあるようです.各個撃破による「癩→ハンセン病」の件名書き換えを「たかが件名」と是認した方々は,かの議員さんによる「訂正要求」を拒む理由の一端を自ら放棄しています.残念ながら.そしてこの件について頑なに沈黙する図問研系blogは一体何を考えているんでしょうね.
3月17日追記:このエントリー,もとのタイトルは「図書館を思想善導に利用する人々について」でしたが,図書館側としては先日の日図協のコメントのようにかろうじて踏みとどまっている部分もあり,未だ「利用する」までには至っていないと考えてタイトルを変更しました.ごめんなさいm(_)m
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コメント
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とりあえず、「お父さんはエライ人だったのね」ということは、プロフィールでわかりました。
投稿: への | 2007/03/19 12:30
>>へのさん
あ,ありゃ戸井田三郎の息子だったのね.息子は今回はじめて知った名前だけど,戸井田三郎なら僕もかすかに記憶がある名前です.なるほど.
投稿: G.C.W. | 2007/03/20 22:33