【書評サイト Loud Minority: 図書館の中の人は出版不況怖くないんですか?】
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「図書館の中の人は出版不況怖くないんですか」と尋ねられたら,大方の公共図書館関係者は鳩が豆鉄砲食ったような顔をするのがオチなんじゃないかなあ,と少々悲観的な予感がします.何しろ出版流通業界に対する公共図書館関係者の無知と偏見は,最近でこそ鳴りを潜めてますが,10年ほど前まではそれは酷いものでした.いわゆる「出版不況」など,現在でも「対岸の火事」ほどにも痛痒を感じていないのでは,と受け止めざるを得ない節があります.
もちろん,例えば児童サービス担当の公共図書館員が「いい絵本がすぐ品切れになる」ことに頭を悩ませている,ような事例はありますが,それを俯瞰的な視点で「出版」をめぐる円環の中に据えて考えられる公共図書館関係者は,それほど多くないと僕は見ています.これ,偏見かもしれませんが,業界誌の内容を一瞥すれば「ず・ぼん」と「図書館の学校」という出版流通にも軸足を載せていることが明らかな雑誌以外は,「図書館雑誌」でも「みんなの図書館」でも図書館関連本の書評(?)は掲載されても出版流通絡みの記事は年に何本も載りませんからねえ.
これはお互い様な一面が確かにあって,著作権絡みで公共図書館を非難する文筆業者を含めた出版流通業界の方々も,三田誠広や室井佑月の過去の発言に見られる如く,恐ろしく公共図書館に無知で偏見を持っている場合が多かったですから(^^;).まあこのあたりは,時間が幾らかかろうとも,今後も引き続き対話を重ねていくことによって相互の認識と理解を計っていくしか無いでしょう.
ちなみに,僕自身は「読書」にそれほどの権威も地位も格式も感じていないし,認めてもいません(^^;).読書による人格の涵養なぞ,そんなものは結果に過ぎず,そんなご大層なことを考えながら本を読むのは正直ゴメン蒙ります.本を読むのは,例えば旅先で鉄道の乗り継ぎの時間潰しに入った書店で見かけたタイトルに惹かれたり,デートの待ち合わせ場所にした公共図書館で偶然見かけたタイトルに興味を持ったり,で充分じゃないですか.『読む力は生きる力』(岩波書店)って本がありますけど,著者の主張は理解できますが,その通りにやろうとは思いません.読書はあくまでも個人の趣味,楽しみの範囲を超えて強制するものじゃありません.
こう考えてくると結局,公共図書館の失速,就中『市民の図書館』路線の失速は,「読書」に過大な価値を背負わせたことにも一因がありそうですね.「読書」に公共図書館と近代市民社会の成熟を期待した『市民の図書館』の著者の意図は,見事なまでに社会の流れに取り残されてしまってます.それがいいとか悪いとか,ではなく,社会の変化に対応できるかどうか,が問題なんですけど,社会の変化も公共図書館の変化も共に「悪」と捉えているようでは,あまりに牧歌的なんじゃないでしょうか.
・・・・・・うーん,最初に意図したのとは違う流れのエントリーになってしまいました_| ̄|○ ホントは公共図書館の存在意義のほうに話を持っていこうと思っていたのですが,どうもいただいたTBからは話がずれていってしまいました.ゴメンなさいm(_)m
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