論文捏造
面白かった(^^;).
最初に転がしたウソが上手くいってしまったが故か,そのままズルズルとウソにウソを重ねて自滅した青年科学者の栄光と破滅を,豊富な周辺取材を基に丁寧に追っている.当人のことも去ることながら,業界の夢を一身に背負ったことといい,業界において高名かつ強力な先達の庇護といい,チェックが働いているはずと誰もが思っていたジャーナルが全くチェック機能を果たしていなかったことといい,社会・経済が科学に求めるものの「変容」といい,本書の著者が「意味が違う」と一蹴している旧石器捏造事件と,その構造がそっくりなことには驚かされる.
まったく恐るべきは,高名かつ強力な先達による有形無形の庇護であろう.「寄らば大樹の陰」とはよく言ったもので,業界において絶大な盛名を誇っている先達を味方につけることが,如何に業界で生き残るために必要か,本書でも旧石器捏造事件でも,先達の存在が結果的に被害を拡大してしまうことにつながっているのは見逃せない.
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