図書館の義務
matsuさんから懇切なコメントを重ねていただきました(その1,その2,その3).ありがとうございます.今回の「週刊新潮」「読売新聞」に対する日図協の対応の何が問題なのか,よくわかります.実は,「フォーカス」の件から「文藝春秋」「新潮45」をめぐる件への流れは,間の悪い(?)ことに『図書館の自由に関する事例33選』(日本図書館協会図書館の自由に関する調査委員会編/日本図書館協会/1997年6月初版)の出版直後の事例であるため,この本には掲載されていないのですね.他にまとまった形で記載されている例もちょっと思い当たらないので,日図協と少年法第61条の関わり方について興味のある方はmatsuさんのコメントを是非ご一読ください.
その上でなお,僕は公共図書館が少年法第61条を「閲覧制限」の根拠とすることは妥当ではないと考えてます.それでも求められた資料を主観的な加工を施すことなく提供することが図書館の義務だと思います.僕がここで書き散らかすより以前,「フォーカス」に対する日図協の「見解」について,既に「図書館雑誌」91巻9号(1997年9月,「見解」が掲載されたのは91巻8号)の〈投稿FORUM〉(p773-775)で「見解」に対する疑義が提出されていますが,公共図書館が守るべきプライバシーとはあくまで「利用者の利用の自由を保障する」(p773)ことが目的であり,図書館側が所蔵する資料におけるプライバシー侵害を点検し,資料の利用を制限することが目的ではありますまい.その点で現行の「図書館の自由に関する宣言」1979年改訂には問題がある,とする〈投稿FORUM〉の筆者に僕は左袒します.
どうにもうまくまとめられないので,今日のところはここまでにしますm(_)m
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» 少年事件報道を廻る日図協の対応を考える [愚智提衡而立治之至也]
さて,日本図書館協会がJLAメールマガジン320号(2006年9月13日発行) [続きを読む]
丁寧なご返事ありがとうございました。
私は、結論部分ではG.C.Wさんの見解に納得しています。しかし、現行の「図書館の自由の宣言」および日図協の従前の見解を前提とすると、今回の日図協のコメントはおかしいんじゃないの、というのがひとつ。もうひとつは、やはり現実的に公共図書館で図書館原理主義が通用するかです。
1979年改定に関して、ご指摘の議論があったことは承知しています。後退ではないかとの議論がありました。しかし、それらの議論を経た上で今の「宣言」があるわけだし、それを前提に日図協の見解があるわけで、いきなりそれらを否定するようなコメントには納得できないと言う気持ちです。
10年程前の「フォーカス」のときは、閲覧制限をしなかった図書館は全国で1館だけと聞いています。今回は逆に今もなお読売新聞を含め閲覧制限をしているのは奈良県香芝の1館だけのようです。
やはりおかしい。
これは日図協がはしごをはずしたということと、新聞が報じてしまったということだろうと思います。
今回のことで、図書館界は、少年法61条と図書館の自由の関係について、再構築する必要があると思います。
投稿: matsu | 2006/09/18 11:29