侍従とパイプ
bk1ではお取り扱いが無いようなので,今日はアマゾンで.それにしても,1979年初版が260円だったのに,新社になって「限定復刊」とやらになったら「1333円+税」ってのは,幾ら何でも(-_-;).
入江相政(1905-1985)は入江子爵家の出身で,学習院教授から昭和9(1934)年昭和天皇の侍従になり,昭和44年より死の前日まで侍従長を務めた.歌人でもあり,随筆の名手としても知られた人物.『侍従とパイプ』はその第1随筆集である.
入江の随筆は,その職掌柄から昭和天皇とその御一家に関する内容が多い.それは晩年に至るまでいわゆる「記者会見」というものをやらず,その肉声に触れる機会の少なかった昭和天皇の私的なスポークスマンとしての役割も担っていたかのようである.それも含めて入江の随筆が楽しいのは,河合玉堂などごく一部の人物を除けば,登場するひとびとが誰も彼もすこぶる愉快な(^^;)人物として描かれていることにある.「最後の宮内大臣」松平慶民のようなひとでさえ,入江の随筆では愉快な人間として登場する.そして,随筆に登場する人物の中で最も愉快な人間なのが,他でもない入江相政そのひとなのだから罪が無い.
何処から読んでも面白い随筆集だが,ここでは「敬語法の手前のもの」という一文を挙げておきたい.先日も新聞各紙が敬語に関する文化庁の調査を取り上げていたが,入江は
とも書いている.問題は「敬語」以前のところにあるんだぞ,という指摘は存外軽くないだろう.
「(前略)たいして敬意もいだいてもいないし,親愛感を持つこともできないけれども,そういうことがあまりむき出しになっても,ちょっと工合がわるい,というような冷たい世界に,もっとも必要なものが,敬語法であるともいえるだろう」(p120)
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