陰陽師
平安時代中期,いわゆる王朝時代に活躍した安倍晴明をはじめとする,実在の陰陽師たちがその当時,どのような役割を貴族社会において果たしていたかを,当時の貴族の日記から丹念に掘り起こしたのが本書である.藤原道長を筆頭とした王朝貴族たちの,日常を彩る怪異に対抗し,禁忌における立居振舞を差配し,災厄から身を守る術を駆使し,競争相手を呪詛したりされたり,競争相手の呪詛を見つけたり無力化したり,当時の陰陽師たちは毎日のように貴族から仕事の依頼を請けて地道に(?)働いていたのだった(^^;).「呪詛」に限らず,律令制下の官僚たる陰陽師以外の「陰陽師」や「宿曜師」が陰陽師と並行して活動していたことにも本書の筆は及ぶ.そして,何故「安倍晴明」が陰陽師の中の陰陽師としてひとり伝説のひととなっていくのか,にまで考察は進んでいく.
超人的な陰陽師の活躍に心躍らせている読者が本書を読んだらがっかりするか(^^;).出来ればそこでがっかりせずに,平安貴族の日常に想像を廻らして欲しいところ.
個人的には,安倍晴明の伝説化が禁忌や災厄をめぐる活動ではなく,他ならぬ「呪詛」をめぐる活動を取り上げて進行していくのが,げにもと思わされた.人間にとって恐ろしきは自然現象や暦もさることながら何よりも,昔も今と変わらず人間の感情,就中「嫉妬」であった,と(^^;).
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