邪馬台国論争
初めに断っておきますが,僕は邪馬台国北九州説に左袒しており,なおかつ邪馬台国東遷説の信奉者です(^^;).故に,邪馬台国大和説を唱えた内藤湖南に焦点を当てて邪馬台国論争を綴る本書に対しては,ちょっと微妙なものがあります.ついでに言えば,三角縁神獣鏡は三国呉の鋳物師が日本に渡来(亡命?)して製作した鏡,という説に同意している者でもあります.
本書は2005年7月に死去した歴史学者・佐伯有清(1925-2005)の遺著.いわゆる「邪馬台国論争」の「通史」ではなく,内藤湖南(1866-1934)を中心に,邪馬台国大和説を唱えた歴史学者,考古学者の群像に邪馬台国九州説を唱えた学者を絡ませながら,邪馬台国大和説の優位性をさりげなく主張しています.「さりげなく」とは言うものの,九州説を唱えた学者について「邪馬台国を九州に所在したものと考えたのは,郷土愛が影響したに違いなく」(88頁)と論じているところなど,ちょっとツッコミどころかな,と思ったり(^^;).
もっとも,他書ではあまり省みられない,小林行雄(1911-1989)が井上光貞(1917-1983)を裁判に訴えた話などにも言及しており,「興味ぶかい逸話を織り交ぜて」という帯の一文はその通りかと.それにしても,学術的な議論を学術以外の手段で解決しようとしたのでは,如何なる理由であれ小林の選択に誤りが無かったとは,残念ながら言えないような気がします(sigh).
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