記者の目:民営化が進む図書館
毎日新聞【記者の目:民営化が進む図書館=賀川智子(静岡支局)】
新聞記者にしては(失礼),公共図書館のことをある程度までは踏まえた議論提起になってます.議論とはこのように提示するものだ,というお手本のような文章ですね.両論併記にはなっておらず「民営化」の負の側面が強調されているので,公共図書館業界のアンチ「指定管理者制度/業務委託」論者には心強い援軍に思えるかもしれません.
それにしても,業界系のアンチ「指定管理者制度/業務委託」論者は,この記事を読んで,自分たちの議論が何故他者からソッポを向かれるのか,一度頭を冷やして考えた方がよろしいんじゃないでしょうか.比べるのも気の毒な【東京の図書館をもっとよくする会: 図書館委託はなぜ起きるのか】この典型的な業界人の文章が如何にひとりよがりであることか,業界関係者は今一度,立ち止まって考えた方がいいと思う.
例えば上記の記事で
とありますが,以前の「無愛想だった職員の対応」の責任を,上記「図書館委託はなぜ起きるのか」を書いた池沢昇のような立場の人間が全く引き受けず,ましてや反省の姿勢も見せずに,公務員司書たちだけが役所の他部署やら民間業者やらの無理解と圧迫と搾取の犠牲者だと言う,実に虫のいい主張を繰り返すその姿勢に不快感と不信感を抱いているのは,僕だけじゃないと思いますよ.
東京都江東区の男性(51)は4年前にカウンター業務が民間委託された図書館を利用する。無愛想だった職員の対応は若い女性の笑顔に変わったが、資料を問い合わせると奧の部屋に引っ込んだままになってしまう。
なお,いつもながら,この記事に対する,書物奉行さんのヨミには脱帽.
(最初の投稿を全面的に改稿してます)
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コメント
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ほや? なんか呼ばれたような気が…
直営時代の江東区立の正職員に聞いた話は実話ですよー。毎日記者さんは,どこまで意識しているのか,やっぱりご自身の米国留学(と,ご自身の知的エリートとしてのニーズ)が効いているのでせう。
やっぱり「高度な」サービス事例をフツーの日本人に示せなかった図書館人の罪は深いものがあるかと…
投稿: 書物奉行 | 2006/06/07 23:13
>>書物奉行さん
コメントどうもですm(_)m
そうなんですよ,この記者さんもUSAでの体験が無ければ公共図書館に目覚めてないだろう,というところを,日本の業界が気がつかないことには,いつまでたってもダメなんじゃないかと思いました.
> ご自身の知的エリートとしてのニーズ
これは避けて通ろうかなあ(^^;),とも思いましたが,やっぱりわかるひとにはわかっちゃうんですよね.その通りです.難しいところではありますが,取り敢えずは「知的エリート」の方々を味方につけませんと,公共図書館はこの先厳しくなるばかりなんじゃないかと.
投稿: G.C.W. | 2006/06/10 16:49
ども。いろいろごたごたしてたんで(^-^*)そちらもチャンバラしてますね
>取り敢えずは「知的エリート」の方々を味方につけませんと
自分ンとこのネタにしようかと思ってたんすが,聞いた話では公共図書館系の人って利用者を「差別化」することを非常に忌避するようですね。「(社会的)差別」をすることと「(マーケティング上)差別化」することは全然ちがう概念なのがわからないみたいです。結果として世間に上手くアピールできないのではと。
○○支援やレファの推進者たちは,その内容が実際にどれほど成功するかというようりも,サービス対象の差別化(アピール)を狙っているような気も。
ところで…
いつぞやも闘病記にからむお話でコメントいただき,どもども。館界は善意やココロを振りかざせば通ってしまうのが困りもの。
わちきのブログも,過ぎし世の図書館史トリビアが主体でしたのに,図書館系ブログに認定されたせいかココロ系の(ココロ図書館員? (・∀・) )人が来るみたいで… 半年に一度くらいのどなり込みを覚悟せねば。一介の古本オタク,本気違い(いや,じっさいわちき「言い換え運動」に反対なんで,本キチあつかいされても,腹たたんのですわ)ブログであったころは平和でしたが。
ああ,あと江東区の話,例のCD予約した人から直接聞いたんですわ。この人はぜんぜん司書系の人じゃなくて,じぶんが巻き込まれた騒動が業界の理論闘争の材料になってるなんてことも,今でも知らないはずですよ。
ではでは~
投稿: 書物奉行 | 2006/06/26 01:29
>>書物奉行さん
コメントどうもですm(_)m いろいろありがとうございます.
彼の件,書物奉行さんに水を向けられましたので(^^;)1度だけ触れておきます.
こちらは福沢諭吉先生に「痩我慢の説」を進呈された勲一等伯爵勝安芳ですね(^^;).まあ,カープのブラウン監督が「過去と未来はコントロールすることが出来ない.今の瞬間を大事にして積み重ねていけば,いい結果が出る」と言われる通りですから,こちらとしては今やっていることをやるだけ.過去の言動について他人があれこれ言うのは他人の考えですから僕には関係ありません.煮て食おうが焼いて食おうが,ご自由にどうぞ(^^;).
ただし,他者の個人情報を公務員かつ公共図書館員かつ図問研会員である方が恣意的に弄んだ事実は残ります(^^;).「東京の図書館をもっとよくする会」の池沢昇氏が「個人情報保護」についてあれだけ力説しておられたのに,他方ではこーゆう公務員もいるわけです.僕が僕の個人情報を僕が誰であるかを特定できる内容で僕のblogに書くのと,他人が許可無く僕の個人情報を僕が誰であるかを特定できる内容で彼のblogに書くのでは,行為の意味するところが全く違うのですが,公共図書館に勤務している公務員なのにその程度のことにも考えが及ばないというのは,公共図書館に対する意識と勉強が肝心なところで不足しているのでしょう.こちらの批判がそのまま肯定されてしまう行為を,自らが実行している愚には,「純粋真っ直ぐクン」では気がつかないんでしょうね(sigh).
「ココロ系の図書館員」というのは言い得て妙です.僕はもう少し邪悪な奴(^^;)なので,こーゆうのを「プロ公共図書館員」と名付けてみました.
ではではm(_)m
投稿: G.C.W. | 2006/07/02 11:35