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2006/02/06

人生の夕映え:追記

 昨日エントリーした「人生の夕映え」に1,2書き忘れたことがある.

 ひとつは,「○○支援」という言葉に対する,過剰とも思える拒絶反応のこと(207頁)である.前川は言う.


「「○○支援」という言葉は図書館がすべき枠を越えていると思うので,私などは恥ずかしくて恐ろしくて,こんな看板を出すことはできない.」
この言葉を信じれば,公共図書館が「ホームレス支援」に乗り出すこともその枠を越えることだと前川が判断していると捉えることが可能なわけだが,ホームレス支援をビジネス支援よりも上位に置くことを公言していた公共図書館関係者は,この言葉を何と聞くだろうか.
 前川は夏目漱石まで持ち出して「○○支援」への嫌悪を隠そうとしないが,「ビジネス支援」でも「医療支援」でも,それを求めている利用者がいるということはすっかりお忘れのようである.自らの立論に都合のいい時ばかり「利用者」を持ち出して補強の材料にしておきながら,立論に都合の悪いときは利用者など無きが如き振る舞い,というのは如何なものか.

 いまひとつ,新版『図書館の発見』を読んでいて少し不思議な感じがしたのは,図書館業界の枠を越えて知っておいてもらった方がいいと思われる言葉について,わざわざ図書館業界で通用している表現を避けている箇所があること.例えば「大英図書館貸出局」(57頁).これは「BLDSC(The British Library Document Supply Centre)」という名称で世界的に通用している部署のことだろうから,何もわざわざ新たに翻訳語を起こして充てる必要など無いはずである.
 余談だが,これを書くのにBlitish Libraryのサイトにアクセスした際,トップページに「Services for Business」というリンクがあることを見つけたときには,前川には気の毒ながら大爆笑するしかなかった.そう言えば前川は「○○支援」を非難するときに,しきりに単館における資料の薄弱さをあげつらっていたが,そういうときのための図書館ネットワークであり資源共有だと思うのに,「貸出し」を縷縷説明する時には「図書館協力」を持ち出した(55頁)にもかかわらず,「○○支援」については図書館協力に一言も言及せず,ひたすら嫌悪感と共に葬り去ろうとしているのは何故だ.
 話を戻して,不思議な表現についてはもう1箇所,「国立の児童図書館」(119頁)を挙げよう.もちろん「国際子ども図書館」のことで,これこそ意味不明な言い換えである.これもまた,前川の周囲に「批評」が存在しないことを象徴しているかのような表現だ.


 これで,僕が新版『図書館の発見』に対して言うべきことは,ほぼ言い尽くしたことになると思う.細部をあれこれ言い出せば切りが無いので,このあたりで一旦擱筆する.
 なお,図書館業界誌(特に「みんなの図書館」と「図書館界」)が今後,どのような書評を掲載するか,読者諸賢は刮目して待たれよ(^^;).

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