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2006/01/30

森有礼,銀座煉瓦街に図書館を開く?

 これの続き.

 森有礼が図書館を開こうとしていた話を僕が最初に読んだのは,『銀座物語』(野口孝一著/中公新書1387/中央公論社/1997年10月初版)88頁にある挿話.「図書館-森有礼と共存同衆」という見出しで,森有礼が銀座煉瓦街に一等煉瓦家屋三棟を購入し,図書館を開いた(もしくは開こうとした)らしいことに触れている.森有礼と言えば,公共図書館史的には不倶戴天の敵(^^;),かの「小松原訓令」への道を開いた国家主義的教育を推し進めた張本として,現在に至るまで悪玉扱いである.その森が明治初年に図書館を,しかも銀座煉瓦街という当時の最先端の地において開こうとしていたというのは,どういうことなのやら.
 ちなみに先日取り上げた『図書館の発見』初版には,共存同衆は出て来ても(ただし,とんでもない間違い付き),森有礼の銀座煉瓦街図書館の話は出て来ません(^^;).

 『銀座物語』でこの挿話の元ネタとして挙げられている『商業教育の曙』上巻(細谷新治著/如水会学園史刊行委員会/1990年12月初版)には,さらに具体的な前後関係が述べられている.この本は一橋大学創成期の歴史をまとめた本で,著者が調べたところに拠れば,森有礼は一橋大学の前身のひとつである「商法講習所」創立に絡んでいるだけではなく,銀座煉瓦街図書館の挫折が商法講習所創設への方向転換につながっているらしい.
 余談:「如水会」が一橋大学の同窓会で,学術総合センターの隣りにある如水会館にその本部があることを,つい先程まで知りませんでした(-_-;).「如水会館」という名前を見て「ここは福岡県に関係があるのかな?」と思っていたくらい無知な奴でゴメンなさい.

 外交官としてのUSA駐在から明治6年7月に帰国した森有礼はUSA留学時代の同志であった鮫島尚信(1845-1880)に宛てた同年10月19日付の手紙にて「書籍院会社」「学。術。文。社中」という2つの「ソサエチー」について触れ,「誰れにても入社出来申候」書籍院会社の「取設方」はそろそろ出来るだろう,と報じている.ちなみに後者の「学。術。文。社中」とは,明治7年から8年にかけて「明六雑誌」を発行し,華々しく啓蒙的な言論活動を展開した明六社のことである.
 この「啓蒙」という意識と活動のあり方こそ,森有礼の思想と行動を読み解くカギであり,森の転変常無きとも見える文部行政への関り方を考える上で把握すべき点だろうと思う.

 ところで,実は森には,USA駐在中から東京に大図書館を作る構想があったことを,小倉親雄「森有礼の文政と図書館」(「ノートルダム女子大学研究紀要」15,1985)が考証している.

(息切れにつき,この稿続く)

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コメント

ものすごくおもしろい! 書籍院会社,って library company ですねo(^-^)o

>>書物奉行さん

 おもしろいようで何よりです.
 久し振りに歴史にクビを突っ込んでいるので,参考文献洗いなおすのが骨ですね(^^;).ひととおり,コピーとってファイリングしてあるのですが,仕切りに見出しを付けておかなかったので,記憶の中にある文献の現物を探し出すのに手間取ってます.そんなこんなで,もう少しかかりますがよろしく.

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