分類に関する独り言
あるSNSで図書館の分類法に過大な期待をかけている御仁を見かける.正直,何か勘違いしているとしか思えない.
思うに,そもそも公共図書館は「社会の木鐸」じゃないし,図書館の分類は分類されている本の「正しさ」を示す指標じゃない.分類(≒請求記号)は,ある本がその図書館の何処にあるのかを示す住所の類でしかないのに,それに「社会正義の実現」みたような過大な期待をかけられても困るわけで.
図書館の分類法ってのは,住所に何の意味も無い記号を付したのでは収拾がつかなくなるから,社会的にも理解し易いと思われる,学問分野の一般的な部門別を応用して,その体系を形作っているものですよ.
だいたい,例の最高裁判決(^^;)を待つまでも無く,本の内容を判断するのは利用者(=読者)の特権でしょう(^^;).如何なる意味においても公共図書館にPolitical Correctnessを持ち込むことには賛同いたしかねます.
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コメント
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こんにちは、図書館退屈男と申します。
「あるSNS」外から眺めていましたが同じ感想を持ちました。
目録はある程度館種を問わず共通性・厳密性が必要かと思いますが、分類はそれこそ各館が個別に自館の意志で付与すべきだと思います。
あと、「あるSNS」なり自分のblogで書けばよいことですが、「図書館員で構成するSNSによる図書館協会等への意見具申と改革」にはあまり賛成できません。現状の館界やその構成員がそれを受け入れるとは思いませんし、あるSNSのコミュを見ていても前へ出て行けるだけの力があるほど成熟しているようには思えません。「意見交換の場」と「意思決定の場」には大きな違いがあります。
投稿: 図書館退屈男 | 2006/01/19 00:44
うーん,わちき分類マニアだけど,そんな運動があるとは知らんかった… 興味津々なり(・∀・)
投稿: 書物奉行 | 2006/01/19 22:19
>>図書館退屈男さん
コメントありがとうございます.
そもそも図書館の分類作業は,その本の内容のすべてを表現したり,その本の内容について価値を判断したりすることとは,別の次元の作業でしょう.それを「正義」から問題視するのは,いささか当を失した議論なんじゃないかと思います.
僕が演習で分類を教えるときには「(書架)分類は,最終的には担当者の専権事項だからね」と言ってます.
コメントの後半の話,同感です.実はパソコン通信の時代に「図書館員で構成するSNSによる図書館協会等への意見具申と改革」と同じようなことを考えたことがありまして,やっぱりダメでした(^^;).SNSをはじめとするネット上での議論空間の未成熟も問題ですが,当blogが日頃から問題視している「図書館界」の如き活字媒体での議論不成立に明らかなように,業界内に真っ当な議論空間が形成されておらず,外部からの提言や改革の要望を受け付けるだけの度量に欠けているのですよね.
さて,どうしたものか.
投稿: G.C.W. | 2006/01/20 00:02
>>書物奉行さん
あ,まだ「運動」にまではなっていません.とあるSNSで提言があったところです.
正直なところ,図書館退屈男さんがコメントしていられるように,未知数どころか,運動に発展するとも思えない状況です.
投稿: G.C.W. | 2006/01/20 00:06
ども。myrmecoleonと申します。こちらはよく見させてもらっています。
「あるSNS」,たぶん議論に混じってました;
正直,あの議論は引っ張りすぎてしまったかなとちょっと反省。
自分もG.C.W.さんの考えに同意します。図書館の分類を社会の規範にされるのはちょっと。あれについては,あくまで“ある利用者の意見”という程度の認識でしょうか。わたしも運動とはほど遠いと思います。
ただ,図書館員SNSはちょっと面白いかな,と思いましたがw
(意見交換・情報交換のレベルで,です。意見具申だのに使えるかは,若輩者なのでわからないのが正直なところ)
投稿: myrmecoleon | 2006/01/21 09:52
>>myrmecoleonさん
コメントありがとうございます.お返事が遅くなりました.
えーと(^^;),ここで取り上げたのは,実はその議論です.問題提起としてはともかく,提起者の方向がどんどんPolitical Correctnessな方向へずれていくのが,読んでいていささか危険だなあ,と.自分で参戦してもよかったのですが,僕が首を突っ込むと間違いなくフレームになりそうなので自重しました(^^;).
「図書館員SNS」におぢさんが否定的なのは,インターネット以前のパソコン通信時代の経験からきてます.パソコン通信やっていたときに「図書館員SNS」のようなところに参加していたことがあります.そこは事実上,ある公共図書館系団体にコミットしていた人達が支配していた言語環境だったものですから,その団体の主張に対する異論は徹底的に排除されていたんですよ.で,僕は「異論」の方でした(^^;).
業界にギルドやクランが跋扈する現状において,図書館員による閉鎖的な言語環境での議論には,僕はまったく期待が出来ません.経験から考えてもそれはギルドの同人誌を,媒体を変えて再現するだけの結果に終わるのが明らかだからです.それなら,まだ某巨大掲示板群の玉石混交な議論(?)の方がマシに思えます.
ギルドやクランに取り込まれていない知性と見識を持った方が業界に増えることが,図書館業界人による「意見交換の場」を成功させるには不可欠だと思います.
投稿: G.C.W. | 2006/01/23 20:24