『市民の図書館』の寿命
何でも日野市立図書館で「中央図書館カウンター業務及び分館を単位として民間委託化を実施する」話があるんだそうで.「第3次日野市行財政改革大綱中間報告について」では明示されていないものの,「行政部会中間報告」では「(2)市民サービス向上と運用の効率化のための民間委託のさらなる推進と、業務切り出しによる委託の実施(行政のアウトソース化)」の「(イ)業務切り出しによる民間委託の実施」の具体的な内容として
「図書館カウンター事務等及び分館の委託(嘱託職員の検討含む)を実施する」
と出て来ます.
で,〈ライブラリー・フレンズ日野(旧日野の図書館を考える会)〉というところが,『市民の図書館』以来の「伝統と格式」(と,敢えて言わせてもらいます)を崩されることに不快感を表明しているわけですが.
うーん,反論としては最低の内容なんじゃないでしょうか? 公共図書館業界内での評価と理念ばかりが語られて,日野市と日野市民(更には日本国内の市民)に対して日野市立図書館が具体的に「富」をもたらしてきたのかが全く語られていないのは,「行財政改革」への反論の態をなしていません.
「行財政改革」という評価基準においては,公共図書館業界というコップの中で,日野市立図書館がどのように評価されていようが,どれだけ名声を博してきたかということは議論の外なんじゃないでしょうか.「日野詣で」という,既に公共図書館史においても歴史の1ページと化しているような現象を持ち出されても今更,という感じがします.伝説の「日野市立図書館」よりもむしろ,いま現実に存在する日野市立図書館が何をやっているか,何をやっていることによって日野市にどのような価値をもたらし,日野市民に何をもたらしているのかを主張するべきであり,そうでなければ〈ライブラリー・フレンズ日野〉の反論は,日野市立図書館は歴史的建造物と同様に「保存することに意義がある」と主張しているのと同義になってしまいます.
で,〈ライブラリー・フレンズ日野〉の反論には前川恒雄の名前が出て来る訳ですが・・・・・・・・・.これも効果は疑問です.前川氏は,『市民の図書館』をまとめあげ,公共図書館業界や滋賀県では最終的な勝利者になったかもしれませんが,日野市在任時というスパンでは最終的な勝利者たりえなかった人物であり,その影響下にあることを〈ライブラリー・フレンズ日野〉が明らかにする事が,当事者に対して有利に働くかどうかは少々疑問があります.
正直なところ,「伝説の日野市立図書館」や「前川恒雄」が持ち出されること自体,「全国の現在の「市民の図書館」のさきがけとなりました」日野市立図書館の実践から始まった『市民の図書館』の寿命が尽きかけている証左なんじゃないか,とさえ思えます.すがれるところはそこだけなのか,と.
日野の実践から始まった40年間は,結局何だったのか.『市民の図書館』も含めた早急な検証が必要な秋に来ていることを,〈ライブラリー・フレンズ日野〉の反論は示していると,現状では受け止めています.
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