がんばれ!日本の図書館
東京の図書館をもっとよくする会で紹介されていた,前・鳥取県立図書館長・齋藤明彦氏の講演「がんばれ!日本の図書館」を読む.
ひとことで言うと「面白かった」.本来,この講演記録を読んで感想を書くべきは,何処かの会の事務局長氏だと思います,ハイ(^^;).
鳥取県では,以前より米子の今井書店が本とひとを結ぶ活動で高い評価を受けていて,先日は第2回企業フィランソロピー大賞を受賞している(それ故,ある種の図書館業界人から眼の敵にされてもいるのだが(>_<),そういう姿勢が業界の信用を堕とすのだよ).ここに来て,鳥取県立図書館もようやく今井書店の活動に伍すだけの事業を展開できるようになってきたということでしょうか.
講演の具体的な内容は東京の図書館をもっとよくする会で紹介されているので,G.C.W.氏は上記の紹介が触れていない部分について若干の感想を.
「従来の守り方では図書館というのはもう守りきれないんです」(p17)
まず促されるのは「発想の転換」.自治体の財政が悪化の一路を辿り,図書館を廻る状況が刻々と変化しているのに,十年一日の如く図書館が同じ事をしているのではダメということ.積極的に新しい事業展開を図らなければ予算は削られる一方である.
「指定管理者制度自体は,(中略)私は百パーセント否定する気にはなりません」(p18)
むしろ問われるのは指定管理者制度を導入した自治体に5年後,10年後の先を見据えたマネジメント能力を持つ人材がいるのかどうかということになるだろう,と.図書館側では,直営のメリットを明示できないとコスト高を指摘されるだろう,とも.
「それからこれが悲しいぐらい差があるのです.書店の差です」「田舎のほうの情報が入らない地域の図書館のほうががんばらなきゃいけないのに,がんばれていない」(p20)
これは,田舎に住んでいる(山陰にも縁がある)G.C.W.氏には残念ながらよくわかる話.言っちゃ何ですが,これは首都圏や大阪圏などの大都市圏にずっと住んでいる方には理解が難しいかもしれません.このあたり,10年ほど前に出版文化産業振興財団による地域読書環境整備事業について,こぞって反対していた図書館業界人は何と読みます?
「趣味的だと思われていると,図書館というのはいつまでたっても真っ先に,あそこは削ってもいいんじゃないかと思われる」(p23)
ここには,敢えて異を唱えておきます(^^;).趣味的な部分であるが故に,削ってはいけないところがあるんだということも,図書館業界はアピールしなくちゃいけません.「役に立つ」は必ずしも貸出とビジネス支援の間にだけあるわけでもありますまい.
「十全なマネージメントをしなくても,そこそこお客さんが来てくれるということが問題点を見えなくしているのではないか」(p27)
耳の痛い指摘です.「昔からの理解者の枠を越える」というのが,G.C.W.氏の活動の悲願のひとつでもありますが,日頃図書館と関係無い暮らしをしているひとに図書館の言葉を伝えることが出来るかどうか.実はちょっと切実な課題でもあります.
「図書館の資産っていったい何なのかということを考える必要があります」(p29)
これは一個の公共図書館のみならず,業界として何が資産なのかを考えなきゃいけないでしょう.「負の遺産」も含めて.
ところで,この講演の中で高く評価されている筑波大学の司書講習(元は図書館情報大学による司書講習)ですが,今年はもうありません(参照:愚智提衡而立治之至也: 平成17年度司書講習実施大学一覧).筑波大学にはそれなりの事情があるのでしょうが,これだけの評価をいただいていたのに,ホントに惜しいことです.
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