「スターライブラリアン」が忌避される理由
以前あるひとが「公共図書館のひとは電話口で係名は言うけど名乗らないのは社会人としてどうよ」という意味のことを言っていたことがありましたっけ.それをとある公共図書館員に尋ねてみたら,凡そ「図書館員は個人ではなく業務として仕事をしているのだから,係の構成員のうち誰が仕事を引き継いでも同じ結果が出る.だから係名は名乗っても個人名を名乗る必要は無いんです」との意味の答えが返ってきました.
理想論としては,この回答は正しいと思いますが,これがまともに機能するのは相当に高度なプロフェッショナル集団(かつ福徳円満な人格者集団)としての司書集団が図書館に形成されている状況下においてなんじゃないかなあ,と思ったり(-_-;).
実際のところ「できる」「できない」図書館員の力量差には歴然としたものがあって,お客の希望は「できる」図書館員へ徐々に集束していくんですよね.「できる」ひとには名指しでレファレンスが来るようになり,「できない」ひとがカウンターにいると避けられちゃうケースもまま出て来るわけです.
そうなると上の回答のような意識だけが肥大化している図書館員の中は面白くないひともいるわけで(^^;).ここに「公務員」という匿名性を尊ぶ風土が重なると,「スターライブラリアン」を忌避する業界の風潮を生み出す土壌が形成されるわけです.
これが「スターライブラリアン」を図書館業界が忌避する原因のひとつかと.これに「業界政治」というものが絡んで,なかなか次世代の「スターライブラリアン」を育てようという雰囲気が醸成されにくいのが,図書館業界の現状でしょう.
「スターライブラリアン」が忌避される「業界政治」については,明日にでも書きます.
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» 「スターライブラリアン」が忌避される理由(続) [愚智提衡而立治之至也]
昨日の続き. 「出る杭は打たれる」という格言を地でいっているのが図書館業界と [続きを読む]
図書館員のプロフェッショナルのことはよく分からないけど、仕事をするにおいて名乗るのは、カタギの職業なら当たり前だと思うぞ。
こういう話を聞くと、自分たちの世界が特別な世界だと勘違いしている気がするなぁ。
サービスを提供する側の人間が、自分たちはサービスを受ける側の人間とちがう世界にいると思っているのでは、上質なサービスは望めないよね。
uchはシステム屋だが、システム屋の数ある金言のひとつに「自分の作ったシステムの下流にいること」というのがあるぞ。
ちなみに、公務員の場合は、公務を執行するにあたっては身分を明らかにする必要があると思うぞ。
法的な義務がある場合もあるのだし。
投稿: uch | 2005/05/11 22:14
>>uchくん
でも最近,電話口で自らを名乗らずに突然用件を話し始める奴,公務員に限らず結構多いぞ(^^;).さすがにちゃんとした取引先の方々は「××の○○です」って名乗るけど.
> サービスを提供する側の人間が、自分たちはサービスを受ける側の人間とちがう世界にいると思っているのでは、上質なサービスは望めないよね。
全く以ってその通り.
投稿: G.C.W. | 2005/05/13 22:29