公共図書館の「本来の業務」とは
川崎村立図書館のサーバダウンに関するblogの記事で見つけたものをご紹介.
【葦岸堂: 図書館のサーバがダウンして】
【葦岸堂: 続・図書館のサーバがダウンして】
【葦岸堂: 補・図書館のサーバがダウンして】
岩手日日新聞の一連の記事から,葦岸堂さんが指摘するような「曖昧さ」を感じることは,G.C.W.氏には出来なかったです.「想像力が足りない」というお叱りは甘んじてお受けいたします.
入り口の張り紙のことは葦岸堂さんのおっしゃるとおりではありますが,貸出・返却について図書館側が当座しのぎの方策を講じているのであれば図書館ではそれを張り紙にも書くだろうし,取材にもそれを答えているんじゃないでしょうか.如何に岩手日日新聞の記者が公共図書館に対して無知であったとしても(この記事を書いた記者は文章が下手だとも思いますが),代替サービスの告知を無視できるとは信じ難いですから(^^;),報道による限りは,貸出・返却などの「閲覧業務」(システム屋さんによる総称)がサーバ故障の間完全に停止していたと考える方が妥当ではないですか.
恐らく,混乱を避けるためにという理由で,もしも図書館システムがダウンしたら,それまでシステムで扱っていたサービスはとにもかくにも一旦停止することにしていた,のではないかとG.C.W.氏は想像してます.もちろん,これはシステムが1日か2日で復旧するという前提でのことですね(サービスの停止を,お互いに我慢ができるのは2日間くらいが限度でしょう).
むしろ4月29日の記事でも5月11日の記事でも貸出・返却を「図書館の中心業務」「本来の業務」と書いていることの方が気になります.G.C.W.氏も大学図書館とは言え,曲がりなりにも現場の人間なので,「サービスはすべてお受けできません」と張り出されていたと記事に書かれているのを読んだ時,レファレンスから読書相談から公共図書館で行われているサービスのすべてが停止されたと受け止めました.その対応が現場の感覚では承服しかねたために【ボクらの欲した民主主義】というエントリーを書き,その対応を批判したわけです.
しかし,この記事を書いた記者が公共図書館に通暁しておらずに,貸出・返却を公共図書館の「本来の業務」と考えていたから,張り紙の文言について葦岸堂さんが指摘するような省略が行われたというのであれば,そこには彼我の間にあるいささか深刻な断層を見ないわけにはいかないと思います.実は,今回の件をぐぐっていた過程で偶然見つけた岩手日報の連載〈輝く20代~私の選んだ仕事~〉で紹介されていた川崎村立図書館の司書さんが,いみじくもこのように述べています.
「日本では図書館の重要性が低い。本を貸し出せばいいんじゃないかというのがある。専門職としての司書が理解されていない。」
ところで,5月11日の記事を読んだ同僚が「このシステムはバックアップを取ってなかったんでしょうか」という疑問を呈していました.文中「今回のシステムダウンは、コンピューター心臓部のサーバーで不具合が発生し、本来の機能を発揮できなくなった。登録した二千七百六十件の情報が消えた。」という下りがあるのですが,毎日バックアップを取っていれば情報の消滅はもう少し少ない件数で収まったのではないか,というのですが,これこそ当該館が使用していたシステムの内情がわからないと何とも言えない話ではあります.
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