図書館史の再検討
「歴史認識」と言っても,昨今流行りの分野ではなく(^^;).
【愚智提衡而立治之至也: 図書館に勤めている人は何の専門家なの?】へのaoさんのコメントが,ちょっとひっかかるんですね.
「図書館界」56巻6号に掲載された田井郁久雄氏の文章でも似たような認識(『市民の図書館』も図問研も声は大きかったけど,田舎の図書館員には『市民の図書館』も図問研も影響力が無かった!)が示されていましたが,後世のG.C.W.氏から見るとそれはいささか信じ難い(^^;)わけです.昔の目録屋や『市民の図書館』を神格化するつもりはさらさらありませんが,その影響力は本当のところどうだったのか,検証されることは滅多にありません.
現行の図書館史は石井敦・東洋大学名誉教授の業績に多くを負っているため,内容が図書館制度史・運動史に偏りがちです(参考).技術論・史についてはあまり多くを割いていません.例えば「日本の公共図書館における〈逆ブラウン式〉貸出法の歴史」を通史で読みたいとき,どんな参考書があるでしょうか.
「専門性」の歴史にしても,「専門性を廻る議論」の歴史は見たことがありますが,図書館員が何を以って専門家とされていた/いるのかを廻る歴史をまとめたものは記憶に無いんですね.それは当然,図書館員の技術史であってしかるべきですが,図書館史の通史には「『市民の図書館』の時代」は項目として立てられていても,間違っても「目録の時代」という項目は立てられない(^^;).図書館における「技術の歴史」が研究者から顧みられていないことには,多少の疑問無しとはしません.
実は技術史に限らず運動史にしても,例えば薬袋秀樹『図書館運動は何を残したか』(勁草書房)とそれに対する大沢正雄の反論(「みんなの図書館」掲載)は,これまたお互いが言いっ放しで検証がほとんどなされていません.
過去の権威を解体構築(deconstruction)するためにも,日本の図書館史研究については何かもう少し業界としてやらなければいけないことがあるんじゃないか,と考えましたが如何でしょうか.
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