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ココログ


ほし2

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2005/03/29

図書館に勤めている人は何の専門家なの?

 以下の文章は去年,ある高校生向けの媒体から依頼を受けて書いたものですが,「高校生には難しいでしょう」という指摘を受けて全面的に書き直し,最終的には書き直したほうが採用されました(^^;).実は依頼された字数の倍以上書いていたこともありまして(-_-;).
 今日はボツになった最初の原稿を何となくご紹介.なお,前振りにあったG.C.W.氏のプライヴァシーを垣間見せる箇所はカットしましたのであしからず.

 みなさんの周りには(中略)様々な規模と形態の図書館があります.この「図書館」と呼ばれる機関に勤めている人達は,さて何の専門家なのでしょうか?

〈過去〉
 以前,と言っても遠い昔の話ではなく,昭和の元号が平成に替わる頃まで,図書館に関わる人達が図書館における「専門家」として第一に指を折ったのが,いわゆる「図書館目録」の専門家でした.図書館目録とは,狭い意味(狭義)では「ある図書館が所蔵している資料を,ある一定の規則に基づき排列したもの」を指し,広い意味(広義)では「ある資料を何処の図書館が所蔵しているかについて,ある一定の規則に基づき排列したもの」を指します.目録には「目録規則」という,どの図書館において作成された目録(特に「書誌記述」と呼ばれる,目録に記録される資料の外側の形から読み取れる項目を記録した部分)でも,ある一定の形式と内容と水準を維持し,図書館にて資料を探す際,いたずらに混乱することが無いようにするための規則が定められています.日本における標準的な目録規則は『日本目録規則』(注1)と名付けられていますが,これが非常に難解な規則となっており,長年にわたって目録作成を専門に研鑚を積んではじめて使いこなすことができる,と言われてきました.目録作成業務が如何に専門家として図書館内でも評価されていたかを,例えば近頃発売された『図書館に訊け!』(注2)という本ではこのように述べています.
「図書館の目録作成に従事する通称カタロガーたちは,少なくとも私の勤める図書館では先頃まで『雲上人』の扱いであった」(p94-p95)

〈現在〉
 デキル図書館員イコール目録の専門家,という図式が崩れ始めたのは,図書館目録がMARC(注3)という形で電算化され,MARCの販売が事業として成立するようになったことが原因のひとつに挙げられます(注4).それは図書館業務における質とバランスに変化をもたらす一方,図書館目録から情報を読み取ることのできない若い公共図書館員を産み出すことにもつながっているのですが,その問題にここでは深入りしません.
 図書館員の専門が目録作成から離れることになったもうひとつの原因は,世の中における情報流通量の増大です.例えば,1985年には約3万件であった書籍の発行点数は,15年後の2000年には約6万5千件と2倍を上回っています(注5).これに加えて,自然科学系の学問分野における商用オンラインデータベースの提供に始まりインターネットの普及にいたる一連の電子化された情報の流通は質量共に拡大の一途を辿っており,今では我々の暮らしに無くてはならぬ一分野を構成しています.この情報流通量の拡大は,とても一個人でカバーできるものではなく,そこで図書館における本質的かつ重要な仕事であったにもかかわらず,いささか継子扱いされてきた「レファレンスサービス(参考調査・参考業務ともいう)」という分野が,ここ10年の間に脚光を浴びることになりました.
 レファレンスサービスとは,図書館に来た利用者からの質問に対し何らかの形で回答を提示する業務のことです.その昔,神戸市立図書館の館長だった志智嘉九郎という人は「森羅万象・古今東西わからないことは何でも図書館にお尋ねください」という意味のことを図書館の宣伝文句にしたといいますが,その後何故かレファレンスサービスは公共図書館・学校図書館の主要業務から外されて来ました.そのため現在もなお,学生・教職員の学習・研究の支援を主とする大学図書館においても,レファレンスサービスを上手に使いこなす学生を育てることはなかなか難しいことのひとつになっています.
 ところが浦安市立図書館の成功(注6)を嚆矢に,蔵書の貸出業務をサービスの中心とする1970年代以降の公共図書館のあり方に疑問を呈する人々があらわれ,現在では「ビジネス支援」などの新しい名称の下,あるいは「調べ学習」「総合学習」という新たな初等・中等教育の展開を受け,旧来からあったレファレンスサービス業務が新たな客層を開拓することにつながっています.
 以上のような理由により,現在の図書館員は何よりもまず資料の探索能力,探索した資料の交通整理を行い利用者にわかりやすく筋道を立てた形で回答とする能力を求められるようになっています.いまの図書館員は「情報検索の専門家」である,と言うことができます.

〈未来〉
 さて,目録作成の専門家から情報検索の専門家へと,図書館が世に求められる機能に応じて変化してきた図書館員ですが,未来はどのようになっていくのでしょうか.確固たる見通しがあるわけではありませんが,幾つかの視点を披露しておきます.
 ひとつは,目録における内容の変化です.ほとんど完成の域に達していたかと思われていた目録規則ですが,ウェブとリンクを用いた「メタデータ」という新たな目録の形態と,より一層の「利用者志向」という視点から,ここ数年で劇的な変化を遂げる可能性があります.そのため,現在展開している電子化された目録の内容にも変化がもたらされ,再編成の必要が発生すると思われます.図書館員の出番があるでしょう.
 もうひとつは,「書籍」の形態における変化です.紙を記憶媒体としたいわゆる「本」の形は,恐らく小説や哲学・歴史など通読を必要とする分野において消滅することは無いでしょうが,百科事典や国語辞典のような検索を必要とする分野の書籍は,検索の簡便さと省スペースという利点をもつ電子化(ペーパーレス化,ウェブ化)が一層すすむものと考えられます.
 また,レファレンスサービスの重要度は今後増すことはあっても,減じることは無いでしょう.そう判断するのは,一見実にお手軽に見えるインターネット検索で探しているテーマに関する基礎知識を欠いていたがために,当然手に入れることができたはずの知識を得ることに失敗しているケースを仕事上何度も目撃しているからです.的確な回答の迅速な提供には,経験豊かな図書館員の判断が役立つはずです.


1) 『日本目録規則』(Nippon Cataloging Rules,略称はNCR)は現在「1987年版改訂2版」(2001年発行)となっている.
2) 『図書館に訊け!』(ちくま新書486)井上真琴著/筑摩書房/2004年8月初版/本体740円
3) 「MARC」はMachine Readable Catalogの略.「機械可読目録」と訳される.一定の形式を定めておき,コンピュータで直接読み取り処理ができる媒体に記録させたものを指す.
4) TRC,日販などによる市販のMARCを図書館が購入し,自館の所蔵目録データベースにコピーもしくはダウンロードして使用する.公共図書館の大半が利用している.大学図書館は,国立情報学研究所(NII)が提供するNACSIS-CATという総合目録データベースを利用して自館の所蔵目録データベースにダウンロードする一方,NACSIS-CATに自館の所蔵を登録し利用者に公開している.NACSIS-CATのような総合目録データベースを「書誌ユーティリティ(Bibliographic Utility)」という.
5) 『出版年鑑』(出版ニュース社)掲載のデータによる.
6) 浦安市立図書館については『浦安図書館にできること』(常世田良著/勁草書房/2003年5月初版/本体2600円)が入手しやすい.

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コメント

 高校生どころか、uchにもムツカしいな。
 uchが図書館のことを始めたすごく初期の頃の話だが、「図書館の人というのは『何の専門家でもない』ことの専門家である」と思った。高度に知的でありながら特定の専門を持たず、他の専門家に「知」の提示を行うのが、図書館員の仕事だと感じたんだ。これは本質的な部分なので今での変わらないと思うゾ。
 問題は、サービスの対象が「他の専門家」という部分であって、これは公共図書館にはそぐわない部分だよね。G.C.W.氏が問題提起していることの本質のトコは、そこでは?
 サービスの対象に「他の専門家」を持てない図書館は、「貸本主義」に走るのもしかたないのでは?

 議題とずれているかもしれませんが失礼します。
 
 私は大学で司書資格を取って、以後10年間図書館業務委託会社で洋書の目録作成を担当してきました。その間3年間、派遣社員として某大学図書館の受付(閲覧)業務も担当しました。現在は某短大図書館の臨時職員として図書館業務をほぼ全般任されています。
 以前は図書館員=目録作成の専門家であった、というお話、なるほどと思います。図書館員でベテランの方は、目録作成を専門として図書館内に一目置かれる存在---業者の目からみてもそう感じました。
 しかし、図書館目録が商用データベースとなり、NACSIS-CAT、インターネットなどで外部からも書誌データを取れるようになってくると、図書館でも目録作成を業者に委託するようになり、図書館の目録・整理部門はどんどん縮小されるようになってきました。
(自分は業者でしたのでそれで恩恵をえていたのですが。)
 一方、図書館で目録作成に重きを置かなくなり、目録の専門家が減って行くにつれ、特にNACSIS-CATの書誌データの質が落ちてきたように感じます。日本目録規則やAACR2の目録規則自体がきちんと頭に入っていない司書、もしくは委託業者が増えてきたためかと想像します。
 目録作成よりもレファレンスサービスの重要性が増してきた今現在、仕方ない、時代の流れなのか、とも思う反面、目録の重要性がおろそかにされつつある現在を危惧するのですが。。。本当にこの流れでいいのか?
 私は目録作成に誇りをもって働いてきました。図書館員はやはり目録作成の専門家でもあるべきだとおもうのですが、現実はそうではなく。
 今現在は某短大図書館で、正職員の司書一名と、臨時職員の一名(自分)なのですが、正職員の方は他の業務にも忙しく日常業務はほぼ私一人でまわしています。小さな図書館と思いきや、こまごまとした仕事がたくさんあり、じっくりと目録作成に時間を費やす時間がないのが現実です。
 受付、レファレンスといった閲覧業務は、利用者と直接接するので、大変重要性を感じますが、図書の整理(請求記号の付与や図書装備)が利用者にはそれほど手間を要する作業だと思われてはいないようです。(NCDや看護分類を知っている利用者がいったいどれだけいるのか。。。)

愚痴と乱文になってしまいすいません。一司書の独り言と思い読み流して頂ければ幸いです。

 「目録作成の専門家」になるには目録作成という仕事の奥が深すぎてとてもとても・・・と尻込みしてしまいがちではありますが、仮にも司書を名乗っているからには目録規則を知っていた方がやはり便利だと日々の業務の中で感じることが多いです。ただ、MARCがあるとそれについ頼ってしまい、書誌一つ一つがどういう根拠でできあがっているのかがわからないまま過ごしてしまう。個々の司書の意識の問題と言ってしまえばそれまでですが、まずは司書課程で目録規則の大切さを必修科目として教え続けていただきたいと思います。にしてもその後はどうしたらいいんでしょうね・・・。

>uch様
 私は公共図書館で働いた経験はありませんが、学問としての専門分野を持たない利用者であっても、その人の志向に合ったさじ加減の情報というのはどこかに存在するはずなわけで、そのさじ加減を処方するのが公共図書館の仕事の一つだと解釈してきました。
ただ、処方の効果が数字として見えるのは自分の知る限り「貸出冊数」しかないわけで、もっといい評価指標があればいいのに、と思います。

>>みなさま

 コメントありがとうございます.
 目録業務については,こちらのエントリーも興味深いので,読んでいただけると幸いです.取り急ぎ御礼とご紹介まで.

いもちょも: 何のための規則か
http://imochomo.seesaa.net/article/2674370.html

話が難しくなってきたので,この件については次のエントリーまで,ちと時間がかかりそうです.

人文科学(書誌学)的な視点で言う目録・書誌と,そうじゃない視点での目録・書誌ってのは,要求されるものが全然違うんですよねぇ・・・。
NACSIS-CATにしても,NCR・AACRにしても,基本的なところが人文科学的視点に偏っていると思えるし,目録担当者自体が,その目録の意味や目的を考えず規則遵守に拘泥しがち。古文書・古文献・史料を人文的視点でもって目録するなら何の問題もないんですがね。
しかし,そればかりやるわけにもいかないし,目録提供のスピードもあるから,簡素化も当然提起される。NCはコピーカタロギングで省力化をしたけども,記述自体はカード目録とあまり変わらないので,結局意味なし。むしろ,他館と調整しなくちゃいけなくなった分,面倒な部分もある。そしてそれをなーんも考えずOPACにしちゃったから,変な定着の仕方をしてしまい。

誰のための目録やら。

ついでに,
昔の目録担当者・図書館員は如何にも目録の専門家で,規則に精通してて・・・って語られることが多いんですが,んなもん大嘘で,目録カードを使って遡及入力してると,いい加減な記述のカードが大量にあることが分かります。どこが精通してて専門的だよ?と言いたくなる。**ごく一部**の目録に精通した図書館員の声が単に「でかかった」から,目録が如何にも専門的なもので,図書館員の欠かせぬ技能のように語られただけ,と理解してます。

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