練馬区で区立図書館の窓口業務等を委託
東京都練馬区で,2006年度までに32の公立施設における運営管理を外部委託するそうで,委託される施設の中には区立図書館も含まれる由(Liblog JAPANより).
練馬区のサイトに行ってみると【区立施設委託化・民営化実施計画】と【「区立施設委託化・民営化実施計画(案)」に対する区民からの質問・意見および区の見解】が公開されていた.詳細部分がPDFファイルになっているのが明示されていないところが曲者だが(^^;).
「区民からの質問・意見および区の見解」にある表に拠れば,質問中「図書館に関すること」は個別の案件では3番目に数が多く,それなりに区民の関心を集めているようにも見える.
しかし実際の質問は図書館に関する質問・意見(リンク先はPDFファイル)を見た限り,「委託業者は営利優先で、図書館の充実に真剣に取組むか不安である」など,委託に対するステレオタイプ(公務員に身贔屓)な質問が目立つ.あるいは「カウンター業務」について,かなり専門的な見地から出たと思われる質問があり,区民からの質問とは言い条,これは区立図書館内部もしくは業界団体関係者から出た質問だと思われる.
で,これらの質問に対する練馬区側の反論が,これまたステレオタイプで具体性に欠け,およそ回答になっていない.厳しいことを言えば,知的誠実さに欠けている.
中で面白いなと思ったのは「図書館の常勤職員は、もっと圧縮すべきだ」という質問があったこと.この質問の背景を窺い知ることは難しいが,これがもし本当に一般区民から出た意見だとすれば,大変なことじゃないですか.
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コメント
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「図書館に関する質問・意見」を見ました。『カウンター業務』に固執(?)してはいないかなぁ、この態度では図書館の職員は、受付カウンターにデンと鎮座ましまし、利用者との上下関係をつくっていそうなムードを感じてしまうのですが...この半年の業務のなかで『フロアーワーク』って大事だなぁ、と感じています。僕の見当違いでしょうか?
投稿: まる3@山中湖 | 2004/10/05 08:09
>>まる3@山中湖さん
そう「見当違い」でもないと思います.目録業務はあっさり外注に切り替えたにもかかわらず,カウンター業務には固執するという判断の基準が,個人的にはよくわかりません(^^;).
投稿: G.C.W. | 2004/10/05 10:17
将来図書館のような形で資料提供をすることで社会とかかわっていきたいと考えているものです。はじめてコメントします。
今回のこの件、カウンター業務もそうですが、なんだか「民間委託」に対してのアレルギー反応のようにも感じます。司書資格取得のために勉強してますが、そこでも「民間委託は図書館の危機」みたいな論調が多く、門外漢として勉強を始めたものとしてはとまどうことが多いです。
専門性の議論も、委託とは直接関係ないような。。。
投稿: ままかな | 2004/10/05 13:27
>>ままかなさん.
こちらこそ,はじめましてm(_ _)m
おっしゃるとおり,「専門性」と「民間委託」は無関係です.と言うより,むしろ現状では委託によって専門性を確保しなければならないところまで,23区の区立図書館は追い詰められているはずです.「専門職=公務員」制を狙った図問研等の路線はとうの昔に破綻し,その残骸が「公務員の守秘義務」を錦旗に民業蔑視のプロパガンダをやっているに過ぎません.
二言目には「知る自由」などと大言壮語しているくせに,この業界は随分と因習や不文律が多く,「知る自由」とは裏腹のお役人的閉鎖性がテンコ盛りです>>特に公共図書館の業界は.ひょっとして,民間委託が閉鎖性への風穴になるのがコワイのかもしれません.
どうか業界の因習に囚われない,自由な目で「図書館」について勉強を続けていただければ幸いです.ままかなさんのような方に「絶望」されることがないように,こちらも出来る限りのことをやりますので,今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
投稿: G.C.W. | 2004/10/05 22:27
ご丁寧なコメントをいただき、ありがとうございます。
今まで勉強していて、「この理論に疑問を感じるのは私がおかしいからなのだろうか」と孤独感(?)にさいなまれることが多かったのですが(笑)、このブログを発見して、現職の司書の方でもそのように感じている方がいるのだ、と知ってとてもうれしく思っています。
これからも、ブログを楽しみにしています。
投稿: ままかな | 2004/10/06 09:46
業務委託を請負っている会社にいる関係で、いろいろと情報は入ってきます。そういう立場上、細かいところまでは書けませんが、自治体によって様々な事情があり、練馬区も相当苦労されているだろうことは想像に難くありません。
ここからは個人的な考えですが、やはり司書資格を取ったからには司書として働きたいと思うのが人情だと思います(中には何となく取ってみたという方もいるかもしれませんが)。しかし、現実には結構な「狭き門」になっているのではないでしょうか。年間で1万人が司書(補)資格を取るなかで、実際に司書として働けるのは5%もいないと聞いたことがあります。確かな統計を見たわけではありませんが、強ち誇張した話でもないのではと思います。民間に開放すれば、それがすぐに解消されるというものでもありませんが、「5cmしか開いてなかった門が20cm開きました」くらいのことはたぶん起きると考えています。既に委託をしている図書館をぜひご覧いただきたいですね。
カウンターにこだわる方々は、そこを「住民と接する最後の砦」のように考えるのかもしれませんが、図書館って、他にもしなければいけないことが山ほどあるということを、この仕事に関わって改めて感じています。「ままかなさん」が図書館のようなところで働かれるまでにどれくらいの時間があるのかわかりませんが、役割分担として、公と民間が共存できる社会になればいいと思っています。少し生意気かもしれませんが。
投稿: への | 2004/10/06 12:52
まあ確かに,こちら↓の10番目に指摘されている点
http://01.members.goo.ne.jp/www/goo/g/o/googoogunmo/needs.html
これ,欺瞞だと思うわ(^^;).そもそも民間委託の導入以前の遥か昔から「専門職公務員としての図書館司書」は思いっきり「狭き門」だったわけですから.だいたい過去にも現在にも,23区には司書の専門職制は存在しないわけだし.それをことさら司書としての就職が難しいことについて,民間委託に責任があるかのごとき論陣を張るのは,大げさな話「歴史」を歪曲するものじゃないかと,公務員試験の倍率に恐れをなして方向転換した人間は思うわけですよ(^^;).
むしろ,今では民間委託による司書採用の可能性を探る動きが,徐々にではありますが司書を養成する側にも芽生えつつあります.こーゆう芽を上手に育てていくことの方が,人事制度としてはある意味どん詰まりになっている公務員制度に比べても,フレキシブルな人材を図書館業界にて育成・供給出来るようになるんじゃないかと思います.
投稿: G.C.W. | 2004/10/06 22:03
G.C.Wさんが挙げてくださっているリンクの方のご意見ですが、失礼ながら表面的にしかご覧になっていないのだなぁと思ってしまいます。
全てがそうだとは言いませんが、例えば「直営のほうが安くなる」という指摘、本当にそうなんでしょうか。公務員には守秘義務があるという話、普通のサラリーマンだって、職務上知り得た秘密を漏らせば同じように罰せられますよね。早ければ2~3年で異動する正職員の資質向上はどうなっているのでしょうか。正職員よりも長く勤めている非常勤職員のほうが図書館業務を良く知っているという現実をどうお考えになるのでしょうか。
また、民間に委託された図書館のスタッフが全員時給だと考えているとしたら、それは違います。職業としての司書が確立されるためには、それで生活していけるだけの賃金を確保しなければなりませんので、核になるスタッフには月給制を導入しているのが今は普通です。将来、公共図書館で働きたいという息子さんにとっては、むしろ門戸が広がったと喜んでもらえるのではないかと、受託している会社は考えていますよ。
以前のコメントにも書いたことですが、公務員vs.民間という図式ではないと思うのです。公務員が担当することは公務員がすれば良いのだし、民間のほうがノウハウを持っているものは民間に任せれば良いということです。
図書館に関して言えば、事務室のなかのノウハウがベールに包まれていたために、カウンターに座っている職員だけを見て「何か暇そう」と思われたりしていたのが現実ではないでしょうか。これが開放され始めたことで、図書館のしているたくさんの仕事がようやく理解されてきたと言ったら言い過ぎでしょうか。
もちろん、何でもかんでも委託すればいいとは思いませんが。
投稿: への | 2004/10/07 12:59