街頭図書館
【著作物再版協議会】Copy & Copyright Diary@JUGEMから7月12日の記事.
正直,こちら↑で紹介されている以下の文章,笑うべきところなのかどうか迷ってしまいました(^^;).曰く,
「文芸家協会などで絶えず問題になっているのは図書館の問題である。図書館が大量に購入するために,一般読者がもっぱら図書館で順番を待って,ただで借りる人が非常に増えている。近ごろは街頭図書館というのがあって,八王子や町田で盛んで,トラックを4台くらい連ねてやってきて,そこで一月単位でどんどん貸し出している。これをやられると,どうしても一般書店での購入者が非常に減ってくるという傾向がある。(中略)私は役割上,文芸家協会の流通委員長をやっているので,やむを得ずこういうことを言っている。どうものどかだなあ,ここはと,そういう気がする。」
この箇所,誰がしゃべったのかなと思ってこのファイルの巻末にある名簿で確認してみたら,どうやら深田祐介氏らしい(他に日本文藝家協会から出ている委員がいない).なんかもう,いちいちツッコミを入れるのも馬鹿馬鹿しい限り.【公立図書館貸出実態調査2003】が出てもまだ「図書館が大量に購入するために,一般読者がもっぱら図書館で順番を待って,ただで借りる人が非常に増えている」などと発言できる輩の頭の中の方が余程のどかだと思うが.
ところで,先日も「貸出冊数至上主義」という新語を発見(^^;)したばかりだが,今日は「街頭図書館」という新語を発見する.この「街頭図書館」とやら,深田氏に拠れば「八王子や町田で」「トラックを4台くらい連ねて」活動しているそうだが,寡聞にして「街頭図書館」という言葉も,トラックを4台も連ねてやってくる「移動図書館」も聞いたことが無い.昭和20年代の公共図書館運動でそのような言葉が使われていたのかもしれないが,1945年以降の記事を検索できる雑誌記事索引ではヒットしなかった.「街頭紙芝居」ってのは見つかったが,これは我々が通常「紙芝居」と呼んでいるもののこと.
書籍も調べてみるかと『図書館の歴史』(寺田光孝,藤野幸雄共著/日外アソシエーツ),『公立図書館の歴史と現在』(森耕一著/日本図書館協会),『こうすれば利用がふえる』(公立図書館の経営調査委員会著/日本図書館研究会),『現代の公共図書館・半世紀の歩み』(是枝英子ほか著/日本図書館協会),『中小都市における公共図書館の運営』(日本図書館協会),『図書館史:近代日本篇』(小川徹,山口源治郎編/教育史料出版会)などをパラパラとめくってみましたが,「街頭図書館」なる言葉は何処にも出て来ない.
おかしい.深田祐介(1931-)と言えば日本航空にも在籍し,大宅壮一ノンフィクション賞や直木賞も受賞している国際派の経済小説作家だったはず.綿密な下調べをしなければ執筆できないであろう内容の小説による輝かしい経歴の持ち主が,何も調べず確認もせず実体の無い虚言を吐くはずが無い.きっと何処かに「街頭図書館」はあるはずだ.
ここは是非,深田氏には今一度健筆を振るって「街頭図書館」をモチーフとした経済小説(「街頭図書館」の開発と普及にまつわる男たちのドラマ)を書いていただきたい.そうすれば,図書館業界の専門家のみならず,誰もが「街頭図書館」の存在について蒙を啓かれることであろう.
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