大学図書館の全面委託
日本経済新聞【江戸川大学、図書館業務を紀伊国屋書店に全面委託】
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『日本の図書館2003』(日本図書館協会)によれば専従職員は3人(日経の記事にある「9人」の根拠はわかりません.上記書籍には「臨時」の項目もありますが人数の記載がありません),図書館の費用総額が約5900万円,そのうち資料費は約3700万円.年間の増加図書冊数は約6500冊.大学・短大の学生数は約2000人.
記事に曰く「「職員の定期異動で図書館の専門的な人材を育成しにくかった」(ネットワーク・情報システム部)。」このコメントを述べている「ネットワーク・情報システム部」というのが大学のものなのか,紀伊国屋書店のものなのかがはっきりしないが,組織における人材育成システムの不備を棚に上げて何を言っているのやら,というところ.恐らく,この大学は図書館に司書有資格者を置いてこなかったんだろうなあ(sigh).G.C.W.氏の拙い経験から類推しても,資料費3700万・増加図書年間6500冊を定期異動で来る職員(恐らく目録・装備の専門知識無し)と臨時職員で捌くのは,かなりキツイとは思いますよ.だからって,それが自らの人材育成努力を放棄していい理由にはならないでしょうが.
また記事に曰く「従来は9人の大学職員で運営していたが」「紀伊国屋書店は8人で運営、全面委託で500万円程度の経費削減効果を見込む」というのは,要するに人件費を削減するという意味だよねえ.でも,500万程度の削減というのは9人→8人の人員削減の効果とほとんどイコールで,それ以上の効果は無いように見えますが如何?
大学という人材を育成する場所で,人材育成のための人材を育成することが出来なかったと言うのは,何とも皮肉な話.委託で人材が定着するかどうかも,不確かな要素が多すぎると思いますし.
それと気になるのは,完全委託ということであれば,例えば私立大学図書館協会のような公的な団体の総会・研修会に出席するのは委託の派遣職員ということになるのかな,ということ.私立大学図書館協会東地区部会研修会に派遣職員は出席する資格があるのかどうか,いささか疑問無しとしないのですがどうなんでしょう>>詳しい方.
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コメント
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“詳しい方”ではありませんが、いささか関わりがあったのでコメントします。といっても、ここではあまり詳しくは書けませんが。
「ネットワーク・情報システム部」というのは大学側の担当部署だったように思います。図書館を含めた情報センターを管轄するところではないかと。したがって9人というのには図書館業務と何かを兼任している人が含まれているはずです。紀伊国屋の8人という人数が妥当なのかどうかはわかりません。専任職員を幾人か残して、他の業務は全面委託という仕様だったような記憶があります。
公的な団体の総会・研修会に出席することも仕様の中にあったような気もしますが、これまで委託するのはいかがなものかと個人的には思いました。
でも、大学図書館の業務委託は確実に増えてますよ。
投稿: への | 2004/06/26 12:35